チケットのご予約
back

Interview@philiahall


想いはひとつに。
ブラームスとの出逢い。
ヴァイオリン:堀米ゆず子
チェロ:宮田 大/辻本 玲

2012年3月31日(土) 18:00
宮田 大/辻本 玲

 

春の訪れとともに、27才のブラームスが書き残した傑作、弦楽六重奏曲を聴く―。深みある和音の響きの中に若きブラームスの希望と情熱がたっぷりとつまった、弾き手も聴き手も心奪われる名作に、堀米ゆず子を中心とした弦楽器の腕利き6人が集います。昨年10月に続く、堀米ゆず子バッハ&ブラームス・プロジェクトの第2弾でもある3月の公演に向け、堀米さんご自身のメッセージと、六重奏に参加する2人の若手チェリスト宮田大さんと辻本玲さんのお話をメールにて伺いました。

《堀米ゆず子 メッセージ》

待ちに待った春の“J.S.バッハ−ブラームス・プロジェクト”第2弾。前回と同じくテーマは“大きな編成から孤へ”。今回は名曲中の名曲をお聞かせします。最初はバッハの真髄、3声のインベンションの弦楽トリオ版から。バッハのフーガはモーツァルトが自分の勉強のために編曲したこともあります。続くメインのブラームスの弦楽六重奏曲は何と言っても私が“ブラームス狂”になったきっかけの曲です。学生時代、山口裕之さんと一緒にのめりこんで練習しました。若々しい10代の思い出とともに、春にふさわしいこの名曲を、宮田大さん、辻本玲さんの今日本を代表する若手チェリストのお二人、ヴィオラには私の友人ロジャー・チェイス氏と、その奥様のシカゴ響で活躍中の小倉幸子さん、セカンド・ヴァイオリンにはもったいない限りですが、山口裕之さんに加わってもらって、究極の仲間たちと演奏するのが今から楽しみです。後半はブラームスのヴァイオリン・ソナタ第3番、そしてバッハのシャコンヌと、d-minor(ニ短調)の世界です。前半の“春の憧れ”からだんだんと凝縮した“孤の音世界”へ、皆様とご一緒しましょう。

2012年1月 ブリュッセルにて

堀米ゆず子さんとはいつごろから共演されていますか。

辻本:堀米さんとは、学生のときに室内楽の演奏会に誘っていただいたのが初めてです。それからは声をかけていただける機会がたくさんあり、毎回貴重な体験をさせていただいています。堀米さんの音楽の流れ方、世界観の広さにはいつも圧倒されています。

宮田:堀米さんには桐朋学園在学中からお世話になっています。たくさんの室内楽をご一緒させていただきました。中でも一番印象に残っているのが、2009年にロストロポーヴィチ国際コンクールで賞をとった後、最初にあった演奏会での堀米さんとのベートーヴェンのトリプルコンチェルトです。コンクール直後ということもあり、興奮が冷めやらず、とても熱が入った思い出に残る演奏会でした。

今回のメインプログラムはブラームスの弦楽六重奏曲第1番です。

宮田:この曲は学生のときに遊びでやったことがある程度で、全く勉強したことがない曲なのでとても楽しみですし、私の中で好きな曲の一つでもあるので、今からワクワクしています。

辻本:六重奏でありながら、シンフォニックな要素もたくさん含まれています。若々しい情熱にあふれたブラームスが浮かぶような曲です。室内楽は大好きです!

共演メンバーは、堀米ゆず子さんのほか、国内外から魅力的な演奏者の方々が集まりました。

辻本:ヴァイオリンの山口裕之先生とは昨年10月のこのプロジェクトの第一回目で初めてご一緒させていただきましたが、また共演できることがとても楽しみです。いろいろなことを吸収したいと思います。宮田君の洗練された音、癒される人柄に久しぶりに接することができるのも楽しみです。

宮田:音楽家の大先輩たちに囲まれて、たくさんの刺激と、音楽観を吸収したいと思っています。辻本君は、歳の近いチェリストの中で私が一番尊敬している大好きなチェリストです。

お二人ともソロや室内楽のほか、サイトウ・キネン・オーケストラなどでも、若手ながら信頼厚いチェリストとして活躍していらっしゃいます。近況や心境を教えていただけますか。

宮田:今も海外と日本の行き来の生活を続けています。最近感じることは、今という時間をもっと大切にしていきたいということです。「今を生きる。今を感じる。」という言葉が私の座右の銘なのですが、今起こっていること、感じたことをチェロという楽器を通して音にすることが、音楽の楽しみなのだと思っています。日頃の練習の成果を舞台で見せるのではなくて、舞台上でそのとき感じたことを音にしてお客様に伝えられたらと思います。

辻本:今はスイスのベルン芸大でアントニオ・メネセス先生についています。先生の謙虚な音楽へのアプローチに魅せられて、留学しました。最近メンバーに加わったトリオ“Bee”(ピアノ:及川浩治、ヴァイオリン:石田泰尚)ではまさに個性のぶつかりあいで、おもいっきり音楽を楽しみたいですね。留学生活もそろそろ終わりに近づいてきましたが、これからももっともっと音楽体験を重ねて、自分を磨いていき、音楽の素晴らしさでもある「一回性」を追求していきたいです。

好きなチェリストはいますか?

宮田:倉田澄子氏、フランス・ヘルメルソン氏、アルト・ノラス氏やマリオ・ブルネロ氏です。音楽が自由で人間的で、とても温かみを感じるチェリストだと思います。

辻本:好きなチェリストは勉強している曲によってころころ変わりますが、音楽としてはピアニストのルドルフ・ゼルキンが大好きです。

コンサートに向けて、お客様にメッセージをお願いいたします。

辻本:室内楽は音楽の醍醐味だと思っています。偉大なる作曲家を通して、演奏家の調和する想い、ぶつかっていく感情をぜひお聴きいただきたいと思います。

宮田:演奏会で、同じ気持ちで同じ演奏を何回もできるかと言ったら、それは不可能です。CDとは違い毎回感じることが変わることによって、曲の流れや演奏会の雰囲気も変わってきます。生でしか味わえない、3月31日にしか味わえない、6人の室内楽をぜひお聴きいただけたら幸いです。