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Interview@philiahall


モーツァルト、メンデルスゾーン、シューベルト。
早熟の天才たちの傑作に魅せられて。
ARCUS(アルクス)ヴァイオリン:松田拓之

2013年3月22日(金) 19:00
ARCUS

 

フィリアホールを拠点に活動する、指揮者なしのオーケストラARCUS(アルクス)が、3/22に第7回演奏会を迎えます。ARCUSとはラテン語で「虹」。普段はN響、群響、新日本フィル、東響、広響、読響などで活躍する20〜30代の若き名手たちが集うARCUSの公演は、いつも“作曲家・演奏家・聴衆を虹の架け橋でつなげたい”というメンバーたちの熱い想いが溢れる演奏会となります。今回のテーマは「早熟天才作曲家の傑作」。ARCUSの代表でN響ヴァイオリン奏者の松田拓之さんにお話をお伺いしました。

前回からの予告どおり、テーマは「早熟天才作曲家の傑作」ですね。モーツァルト、メンデルスゾーン、シューベルトはどんな作曲家でしょうか?

今回取り上げる3人の作曲家の共通点で最も大きなことは、それぞれ短い人生(いずれも30代で亡くなった)だったにも関わらず、後の多くの作曲家に影響を与え、彼らなくして音楽の歴史は語れないということでしょう。それぞれ強烈な個性をもち、斬新で革新的でありながら、人々の心を掴んで離さない音楽は、今日でもたくさんの方々に愛され、多くの人の心を魅了しつづけています。今回はこの偉大なる作曲家たちのおいしいところを選りすぐってお届けしようと思っています。

その3人の作曲家が全員10代の若さで作曲した作品を演奏されます。また、協奏曲(モーツァルト)、室内楽曲(メンデルスゾーン)、交響曲(シューベルト)とさまざまな形式の曲を一度に聴ける、アルクスらしいプログラムです。

今回はアルクスにしては珍しく(笑)、とても有名な曲が揃いました。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲はヴァイオリニストにとってもとても重要なレパートリーですし、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲は演奏家にとって何回演奏してもまたやりたいと思えるような曲です。シューベルトの交響曲第5番もシンプルで非常に親しみやすい曲です。しかしこれらの傑作がいずれも10代の時に作曲されたということに驚かれ、信じられないとお思いの方も多いのではないでしょうか?それほど曲としての完成度が高く、それぞれの作曲家の天才ぶりを肌で感じていただけるのではないかと思います。曲の編成としてはアルクスらしく、バラエティに富んでいて、ステージマネージャー泣かせの大転換ありです。
若手メンバーながら、N響はじめ多方面にわたりその頭角を現してきた山岸努のソロによるモーツァルトのヴァイオリン協奏曲、8人の情熱が入り乱れることが今から予想できるメンデルスゾーンの大室内楽、そしてメンバーひとりひとりが意見を戦わせながら音楽を作り上げるシューベルトの交響曲。どれをとっても今から楽しみです。曲間で舞台上を右往左往するステージマネージャーの仕事ぶりも合わせてお楽しみください!

松田さんはN響でのオーケストラの活動のほか、アルクスのような室内楽やソロの演奏、音楽大学やアマチュアのオーケストラでの教育活動など、お忙しく活躍されていらっしゃいます。普段はどんな生活スタイルなのでしょうか?

我々の生活パターンは非常に不規則なことが多いです。私の所属するN響だと、練習は朝の10時から。一般の会社と比較すると遅いほうですが、みんな準備のため1時間前くらいから、早い人では2時間以上前に練習場に来る人もいます。それに対して本番の日はだいたい夜9時まで。テンションが最高潮に達して仕事の終わりを迎えてしまうので、夜遅くまでワイワイやってしまうことも少なくありません。N響の活動以外の時間も、N響以外の本番の合わせ、学校や社会人やジュニアオーケストラの指導や指揮、生徒のレッスン、そしてそのために必要な練習や準備などで常に追われている毎日です。一応降り番(所属オーケストラで演奏に参加しないこと)はだいたい1か月あたり1週間程度ありますが、そこに別の本番の仕事が入ってしまったりすると休みの日はなかなか取れないです。まあ好きな音楽をやっているので苦痛に思うことはありません。ヴァイオリンが弾けなくて苦しい思いをすることは多々ありますが…。

アルクスのメンバーの方々もさまざまな経験を積まれて、それぞれの所属オーケストラの中でも若手から中堅どころへと移行しつつあるかと思います。松田さんも、昔に比べて音楽に対して何か意識の変わってきたところはありますか?

オーケストラに所属して13年近くたち、最近では若手も増えてきました。昔はただ弾いてれば良かったような気がしますが、今や演奏以外の仕事も任され、セクションやオーケストラ全体の将来的な展望、クラシックコンサートの今後のあり方などについてもいろいろ考えるようになってきました。でも、まだまだ経験は浅いですから、ひとりの演奏家としてまだまだ前へ進まなければなりません。より良い音楽、技術を求めて先に進む気持ちはこれからも変わらないと思います。

アルクスとして、今まで8年間、さまざまなテーマで6回の演奏会を開催してきましたが、松田さんがとくに印象に残っている回はありますか?

やはり、第1回はとても印象深いです。構想に2年以上の歳月をかけてやっと実現できたアルクスなので、最初の音が出たときは本当に感動しました。その時のことは今でも忘れません。他には、第4回でやった「華麗なる協奏曲の競演」でのR.シュトラウスの二重小協奏曲は自分自身とても大好きな曲なので初めて演奏できてとても心に残っています。また、第5回「HAYDN'sジョーク」のアンコールでハイドンの「告別」を演奏し、最後に私だけが取り残され、照明も消えて演奏会が終わる、というのもありました。そしてベートーヴェンの英雄や、昨年のシューマンなど、大曲に挑んだこともとても印象に残っています。

松田さんは音楽以外では、“食”がご趣味でしょうか?想い出の一品を教えてください。

演奏旅行をする際にどこでおいしいものを食べるかということは私にとって、とても重要な問題です。当然移動スケジュールは、おいしいものを最優先に決めてしまいますね。九州によく行くことがあるのですが、博多のラーメン、佐賀牛、大分のさば・あじ、長崎ちゃんぽん、宮崎牛、熊本ラーメン、鹿児島では焼酎はまさに必須科目です!人吉のそば屋もはずせません。九州だけでも書ききれません。あ、ロシアのボルシチもおいしかった…。考えているだけでおなかがすいてきます(笑)

アルクスの今後の展開は?お客様へのメッセージをいただけますか。

具体的なことはまだ決まっていませんが、また来年演奏会をやる予定です。私たちにとってこのフィリアホールは生まれ故郷のようなものです。なんだかホールに来ると気分が落ち着きます。そして仲間と音楽を作り上げる気持ちがぐっと高まります。今回もこのホールでお客様とともに音楽を楽しむことができるのをメンバー全員心から楽しみにしています。ぜひ3月22日にフィリアホールでお会いしましょう。そして今後とも末永く、アルクスを可愛がっていただければ嬉しいです。