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馬と人とが織り成す幻想的な舞台芸術。フランスの騎馬オペラ団「ジンガロ」の世界ツアーに2000年〜2002年までソリストとして参加。帰国後も意欲的な活動を続ける期待の若手クラリネット奏者、亀井良信さんに、4月のフィリアホール公演に向けてお話をうかがいました。
「ジンガロ」ではどのような活動を?
円形の土の舞台の真中に、僕一人で立ってクラリネットを吹いているまわりを、ダンサーたちが踊るんです。「ジンガロ」はフランスの舞台芸術集団ですが、所属している人たちは多国籍で、インドやキューバ、モロッコなどからも来ていました。団長のバルタバスは、音楽、美術、ダンス、それぞれの専門分野には踏み込まないのですが、全てをまとめあげる求心力を持っている人でした。彼のもとで3年間活動して、「美しいこと、悲しいことは人種を超えて世界共通」と改めて感じた非常に有意義な体験でした。
フランスには高校卒業と同時に渡られていますね。プロになろうと考えてのことでしょうか。
いえ、とにかく好きで続けていて今の自分があるという感じです。高校生のときに、ミッシェル・アリニョンという憧れのクラリネット奏者が日本に来て、レッスンをしていただいた関係で、彼のいるフランスで勉強することを決めました。その後に師事したアラン・ダミアンには、ものすごい量の現代音楽に初見演奏など、とにかく厳しいレッスンを受けました。おそらく試されていたのだと思うのですが、ピエール・ブーレーズ(作曲家)に紹介されて、ジンガロに参加するに至ったわけです。ブーレーズは偉大な音楽家であると同時に本国では政治的な発言権も持っており、演奏を聴いた後に、僕のビザを更新するために「じゃ、(当時の大統領の)シラクの弟に電話しとくよ」なんて言うので驚きました。
ジンガロのツアーで300回以上も演奏し続けた、ブーレーズ作曲「二重の影の対話」をフィリアホールのステージで久しぶりに実演していただけますね!
本当にうれしいです。この曲は計7台のスピーカーをステージや客席に配置して、クラリネットの音が色々な方向から聴こえてくる音響効果を狙っています。舞台上の照明演出も加わって非常に面白いのですが、機材費用がかかるので、なかなかコンサートで実現できないんです(笑)。今回はブーレーズにちなんで、「B」から始まる作曲家を集めてみました。ピアノ曲集で有名な兄を持つ弟ブルクミュラーの「二重奏曲」は、ごくシンプルな形式の聴きやすい曲。耳慣れたところで、柔らかい感じのドビュッシーのクラリネットとピアノのための第1狂詩曲を。名曲ブラームスのクラリネット・ソナタ第2番は僕がいつか日本で演奏しようと取っておいた曲で、これをメインに、ブーレーズに向けての流れを考えました。ベルクのクラリネットとピアノのための4つの小品は、ハイトーンの超ピアニッシモなどクラリネットの様々な音色の変化を感じていただけると思います。そして、最後にブーレーズですね。共演するピアノの上田晴子さんは、パリ時代に同じアパートの1階下に住んでいて、試験やコンクールでよく演奏して頂きました。言葉で説明し合わなくても全て音楽で分かってくれるすばらしいピアニスト。自分の原点です。
そもそも楽器との出逢いは?
初めはヴァイオリンを習いましたが、どうしても好きになれず、9才の時に、父(クラリネット奏者の亀井良幸氏)のクラリネットをやりたいと言って始めました。高価な楽器を父が「これで遊べ」と僕に渡して、母は卒倒したらしい(笑)。でも「遊び」って本気だと思うんです。楽しくて何時間でも集中できる。僕は今でもクラリネットで遊んでいるんでしょうね。子供の頃に受けた父の教えはその後どこに行っても通用して、今、教える立場になってみて、基礎の大切さを実感して、父にとても感謝しています。
「演奏会って不思議な商品ですよね。何も見えないものにお金を払うんですから」と真剣な顔でインタビュー中にぽつり。音楽を愛する一途さと海外での厳しい試練をくぐり抜けてきたタフさが入り混じった長身の好青年からは、話し下手と言いながら、とめどなくお話が溢れてきて、何よりも音楽が好き!という気持ちが伝わってきました。「お客様を裏切らないためにも、万全な体勢で臨みたい」と気合十分です。
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