愛するハープとともに・・・
ハープ グザヴィエ・デ・メストレ
ステージの上で金色に輝くハープの横に立つメストレさんは、金色の髪に彫りの深い端正な顔、燕尾服が似合う長身で、まさに「ハープの貴公子」といった趣です。世界最高峰のウィーン・フィルのフランス人初の団員であり、ハープのソロでも活躍するメストレさんが、
リサイタル・ツアーで日本を訪れた7月に、お話を伺いました。Tシャツにジーンズというラフな格好で現われたメストレさんは全く飾り気なく、こちらの質問に生真面目すぎるほ
ど真摯に答えてくださいました。
ハープを始めたきっかけを教えてください。
9歳の時、両親が教育の一環として私に音楽を習わせることにして、まず音楽理論を学び始めました。その先生がたまたまハープも教えており、若くてとてもきれいな先生だったので(笑)ハープを始めることにしました。
プロになろうと思ったのはいつ頃ですか?
16歳の時にパリで行われた国際コンクールで優勝したのですが、家族が学者や弁護士といったアカデミックな家系だったこともあり、私も政治と経済を学んでいました。20歳の時、
ハープをやめてロンドンのスクール・オブ・エコノミクスで勉強していて、初めて自分がどんなにハープが好きか気づいたのです。10ヶ月くらいハープを弾けなくて、ハープが恋し
くて…。その間もロンドンのコベント・ガーデン(ロイヤル・オペラ)に通って毎日のよう にオペラを観ていました。それで音楽の道に戻ることにしたのです。22歳でロリン・マゼール率いるバイエルン放送交響楽団のハープ奏者になりました。
そして25歳でウィーン・フィルのソロ・ハープ奏者に就任されました。
オーケストラのハープ奏者になろうと思っても、(ハープは人数が少ないので)空きがなかなかなく、希望のポストに就けるかどうかは本当に運だと思います。私は交響曲より、オペラが好きなので、本当にラッキーでした。オペラでは、ハープのパートに素晴らしいソロがたくさんあります。ワーグナーの「タンホイザー」、ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」、プッチーニ「ラ・ボエーム」など…。偉大な歌手から勉強することも多いですね。
ウィーン・フィルのメンバーは、よくオーケストラだけでなく、室内楽やソロの活動もします。ソロを演奏するためには、より練習しなければならないので、オーケストラにもメリットとなるのです。オーケストラ活動だけだったら練習しないかもしれません(笑)。ウィーン・フィルのメンバーは毎年70演目のオペラを演奏しますが、そのうち5演目だけがプレミエ(初演)で、あとは演奏しなれた曲ばかりなのですから。
ハープは世界的にも女性の奏者の方が多いのではありませんか?
90…いや95%が女性ですね(笑)。でも19世紀に活躍したハープ奏者は、パリッシュ=アルヴァースやゴドフロアなど皆男性でした。20世紀になって、美しい女性がサロンで演奏するようなイメージが広まったのです。でもソロ楽器としてのハープはただ美しいばかりではありません。それを伝えられたらと思っています。若い世代も育っていて、例えば昨年のUSAハープ・コンクールの優勝者も男性でした。
メストレさんのハープの演奏を聴いて、フォルテからピアノまでダイナミクスの幅広さに驚かされました。特に「モルダウ」はハープ1本で演奏しているとは思えないほどです。
それが私の目指していることです。時々全てをフォルテで弾く人もいますが、ピアノをピアノで弾くことによって、フォルテがより効果のあるものになります。フォルテよりピアノの方が難しいこともあります。オリジナルのオーケストラの曲がよく知られている「モルダウ」のような曲をハープ1本で演奏することは、私にとっても挑戦ですが、ハープのオリジナル作品だけを並べて、あまり知らない作曲家や曲ばかりなどと思ってほしくないんです。ハープは弦をはじいて音を出すという原始的な楽器で、ハンディもありますが、
私はピアノの作品や他の楽器の音楽も大好きで、ハープでも同じように音楽を演奏したいと思っています。
「普通に弾くと雑音が出るので、響きを止めるために、私だけの特別なテクニックがあるんです。」とメストレさんが手を広げると、びっくりするほど大きな手、長い指でした。世界最高峰のウィーン・フィルの近寄りがたいほど素敵なソロ・ハープ奏者が、こんなにも素朴に純粋にハープを愛している若手奏者であることが分かって、こちらまでうれしくなっ
てしまいました。10月のフィリアホールのコンサートでは、写真だけでは伝わりきらない 彼の魅力が、演奏とトークで明らかになることでしょう。どうぞお見逃しなく!
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