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Interview@philiahall


男たちの熱き夢。大地を揺るがす声の饗宴!
IL DEVU イル・デーヴ
テノール=望月哲也、大槻孝志 バリトン=青山 貴
バスバリトン=山下浩司 ピアノ=河原忠之

2012年7月24日(火) 11:30

 

4人の歌手と1人のピアニスト、メンバー5人で総重量500kgとも言われる、素晴らしい体格に恵まれた男たちが集まってできたスーパー・ヴォーカル・ユニットが「IL DEVU」。某世界的人気グループをもじってつけられたチャーミングな名前ながら、それぞれがトップオペラ歌手として第一線でばりばり活躍しているだけに、実力は本家を凌ぐほどのハイレベルで本格派そのもの。昨年5月サントリーホール・ブルーローズ(小ホール)で行われたデビュー公演では、圧倒的な声量と絶妙なハーモニーで会場を大きな熱気に包み込み、心震える忘れられぬ一夜となりました。フィリアホールでの7月24日“らん・らん・ランチにいい音楽”の公演を前に、メールにて各々に想いをうかがいました。

小さいころの音楽体験を教えていただけますか。

山下:レストラン(パブ)の上階に自宅があり、毎晩ジャズの生演奏がほのかに聴こえていました。ロックやジャズばかり聴いていたのですが、中学校の恩師に「声楽」の誘いを受け、「音大なら学科試験が2つ!」と聞いて飛びつきました。パヴァロッティの歌に衝撃を受けてからはクラシックが好きになり、恩師の自宅でたくさんのレコードを聴かせてもらいました。

青山:子どものころは音楽が特に好きというわけでもありませんでした。歌を始めるきっかけとなったのは、高校に入学し、偶然勧誘されて合唱部に入った事です。合唱曲はもちろん、部員が年に数回取り組む独唱会でオペラやクラシックのさまざまな曲に触れ、声楽に一気に興味を持つようになりました。

望月:私の場合は、中学校での「合唱」です。高校も合唱の盛んな高校でNHKのコンクールで全国大会に出たりしました。子供のころは…ほとんど音楽はやっていないです。妹がエレクトーンをやっていたので、鍵盤楽器はあったのですけどね。興味はなかったです。

大槻:両親とも声楽家で、両親の指導する少年少女合唱団に幼稚園から大学まで在籍していました。中学生のときに半ば無理やり連れていかれた、世紀の名歌手ニコライ・ゲッダの引退コンサートで、ビゼーの「真珠採り」の名アリアを耳にしたとたん、それまで感じたことのない言葉にできない感情が溢れ、両目から大粒の涙が流れていました。そんな自分に驚くとともに、こんなにも感動を与えられる歌の世界の魅力や価値を心から感じて、中学生ながらにオペラ歌手になろうと強く決意しました。

河原:ピアノを始めたのは9才から。友人がやっていて自分もやりたくて始めましたが、ピアニストとしてはあまりに遅いスタートです。歌謡曲のレコードをよく聴いている子どもでしたね。

“IL DEVU”結成のきっかけは何でしょうか。

山下:大槻君からある晩、4人で男性カルテットをやらないか?とメールが届きました。2つ返事でOKしました。きっと楽しく、いいものができるであろうと思ったからです。その後、ピアニストは…河原さんでしょ!となり、お忙しいのでダメもとでお伺いしたら、これまた快諾してくれたのです。

青山:大槻さんは芸大の一つ上の先輩ですが、事あるごとに「彼らがIL DIVOなら僕らはIL DEVUだね」などと冗談交じりに言い合っていました。まさか本気だとは思っていなくて、初めは「ホント〜?!」と言う感じでしたが、このメンバーならではの音楽が作れるかもという予感がありましたし、僕をメンバーの一員として考えてくださって嬉しかったです。

望月:合唱あがりなのでアンサンブルが大好きで、結成の話があったときは面白そう!いい歌い手が集まって良いアンサンブルが作れるな、と確信しました。

大槻:自分が言いだしっぺなので、このメンバーがもし集まったら…、うふふ…とわくわくどきどき大興奮でした(笑)。

河原:4人とも実に大好きな歌手だったので、本当に嬉しかったのです。今は、みんな兄弟みたいに思っています。

“IL DEVU”の織りなす素晴らしいハーモニーはまさに驚愕です。男声4人でのアンサンブルの魅力はどういったところですか。

望月:一人一人の実力が高ければ高いほど、可能性を感じると同時に、音楽的個性のぶつかり合いで、バランスを保持していくのも難しいところです。幸いコミュニケーションのとれるメンバーなので(笑)、いろいろと議論を重ねて良いものを作り上げることができています。僕個人としては、より一層自分の出す「音」への意識を高く、そして他人の出す「音」にさらに細心の注意を払うようにしたいです。

選曲や編曲はどのようにされていますか。

大槻:男声4人の楽譜はIL DIVO以外、なかなか市販はされていません!両親がずっと合唱指導をしていることもあり、楽譜や資料などが自宅に山ほどあるので、最初はそこから探す作業から始めました。それに加え、合唱の輸入楽譜などを専門で扱っているパナムジカさんのカタログから、気になる楽譜を片っ端から購入し、稽古のときに皆で音を出してみて、レパートリーにするかどうか、次の演奏会で歌うかどうか判断しています。不思議とメンバーの趣味が合うのでこの方法で問題ないですね。あとは、演奏会で実際に聴いて感動してレパートリーに加えた曲も多いです。プログラムを決めるときは、実際に演奏するホールの雰囲気や音響、季節感などを大事なポイントとしています。それに、聴いていただくお客さんの耳なじみが良いように、時代の古い作品から徐々に新しい作品やジャンルへと自然に移っていくようなプログラミングを心掛けています。編曲については、各々が自分の歌うパートを歌いやすかったり綺麗だな、いい感じだな、と思うように音を変えたりすることがほとんどですが、IL DIVOの曲に関しては、マイクを使いオーケストラをバックに歌うことを想定に書かれていますから、私たちはピアノ伴奏でマイクなしで歌うので、それでもきちんと音が埋まるように、音を変えたり長さを変えたりして対応しています。今後は何人か良い編曲の方を見つけているので、だんだん自分たちのためにアレンジされた楽曲を演奏できるようになっていくのが楽しみです。

皆さんとてもご多忙な中、練習のスケジュールを組むのも大変そうです。

青山:それぞれオペラや演奏会を抱え、多忙な方々なので、やはり定期的に練習と言うわけにはいきません。今は、演奏会が近づいてきたころに一気に練習をするというスタイルです。もちろん、メールなどで色々と事前に打ち合わせはしますが、かなり早い段階から、全員のスケジュールが合う日を確保して練習を組んでいます。今年は演奏会が多く予定されているので、ぜひできるだけ多くの練習を組みたいですね。

フィリアホールでのプログラムの聴きどころを教えてください。

山下:やはり日本人ですから日本語の歌をできるだけたくさん歌いたいです!源田俊一郎編曲の「ふるさとの四季」は誰でも知っている日本の曲をメドレーにしたもので、IL DEVUではこの演奏会で初めてとりあげます。ご期待ください!

歌は人間そのものの響きのせいか、どの楽器よりも心に一番届きやすいと思います。“歌の力”とは何でしょうか。

河原:言葉というものはそこに魂が宿ると言霊(ことだま)となります。そこに音楽が加わると言葉以上に言葉を伝え、本当に人間の心に深く届きます。言葉というものがある以上、歌はどの楽器よりも心に一番届きやすい、と言えると思います。先日、歌を良く知るチェリストの方とシューベルトのアヴェ・マリアを演奏したとき、僕が理想とするブレスが長い音楽で、しかもそこに歌詞が感じられたのです。かの有名なフルーティスト、エマニュエル・パユさんと共演させていただいたときも感じましたが、歌や歌詞を知り尽くした楽器の奏者と共演したとき、そこになんとも言えない言葉では言いつくせない感動があります。

IL DEVUとして、そして個人として、これからの目標をお聞かせください。

山下:IL DEVUはやっていてとにかく楽しい!常に他のメンバーからの音、そして声が刺激になるのです。ここから生まれる音楽をできるだけたくさんの方に聴いていただきたいと思っています。個人としては今までと変わりなく音楽に対して真摯に、本物を目指して勉強し続けたいと思っています。

青山:現在さまざまな曲に取り組んでいる中、とくにIL DEVUにぴったり合う曲をたくさん見出したいです。また、オリジナルのアレンジや曲を作っていただけたらとても嬉しいです!個人的には、イタリアオペラや宗教曲を中心に活動していますので、もっとレパートリーの拡大に努め、それをもっと多くの方々に聴いていただきたいです。

望月:IL DEVUでは、聴いてくださる皆さんに癒しを与えられるような活動をしていきたいと思います。個人の目標は、オペラを頑張りたいな、と。歌唱と演技をより一層レべルアップしたいです。

大槻:私たちに合う楽曲に出会い、それをみんなでしっかり磨いて、日本中で演奏したいです。それによって、皆さんが普段の生活で忘れかけている大事なことや気持ちを少しでも思い出すきっかけになれたら最高ですね。将来、日本の皆さんの心にしっかり刻まれるグループに…。大きな男たちの大きな夢です!!

河原:IL DEVUの全国公演、僕の指揮によるオーケストラ公演、そして海外公演!個人としては1つでも多く指揮の経験を増やすこと。

音楽以外のこともお聞きします。皆さんそれぞれのニックネームを教えてください。

山下:「こーじー」大槻孝志命名。たまに「コージー・コーナー」(ケーキ屋さん)や「こじさん」と呼ばれることあり。

青山:青山の苗字を取って単純に「あおちゃん」と呼んでくれる方が多いですが、高校や大学時代の昔からの知り合いの方は「あおやん」と呼んでくれます(笑)。

望月:学生時代から「もっちぃ」です。

大槻:「つっくん」。いろんなあだ名はありましたが、気付いたらみんながそう呼ぶように。

河原:「カッパマン」。高校時代、「Dr.スランプ あられちゃん」に出てくるスッパマンから来たあだ名。同級生など、皆、これで呼びます。

普段のリフレッシュ方法はありますか。

山下:おいしいものを食べること。ドライブ。

青山:オンとオフが大切だと思うので、休みのときはできるだけボーっと過ごすのが好きです(笑)。外出するとしてもあまり遠出せず、近場で外食したり、飲みに行ったりという感じでしょうか。

望月:泳ぐのはいいリフレッシュになるので、ジムに行っています。あとはビール!

大槻:ドライブしたり日帰り温泉に行ったりですかね。

河原:とにかくおいしいものを食べること。

最近のマイブームやご趣味がありましたら、教えてください。

山下:映画観賞、音楽鑑賞(クラシックの歌以外)。格闘技全般のTV観戦。最近一番おもしろかった映画は「ミッション・インポッシブルV」。音楽はAdele(アデル)のCDを良く聴きます。

青山:最近引っ越しをし、住み始めて1年くらいしか経ってないので、家の周りを散策するのが楽しみです。また、スポーツ観戦(TVですが)やカラオケなども好きです。カラオケでは、一人でワ〜っと歌うのも良いですが、即興で人が歌うのにハモらせるのが好きです。

望月:趣味は、スポーツ観戦。あとは飛行機好き。空港で飛行機を見るのが好きですね。

大槻:リフレッシュも兼ねていますが、ドライブや温泉に加え、美術館巡り、映画鑑賞、散歩、カフェ巡り、ずっとブームなのは大した数や値段ではありませんが、食器集めや腕時計集め。

河原:映画鑑賞、読書。語学はもっと習いたいけれど時間がない。

苦手なことはありますか。

山下:人前で歌ったり話したりすること(笑)。オペラなどではメイクして衣裳をつけるので、まだ大丈夫かな。そして初対面の人と話すこと。とても緊張します…。

青山:東京で生まれ育ちましたが都心ではないので、人ごみが苦手です。音楽の面では、暗譜が苦手です(汗)。楽譜を読むのは早い方なのですが。

望月:パクチー。絶対食べられない!

大槻:らっきょう。幼少期に父親から「ほら!剥いても剥いても皮だらけだろ!食べなさい!」と意味不明な言葉で無理矢理食べさせられて嫌いになりました…。苦手なことは、ありすぎて絞れません。

河原:コンサートでのテレビカメラ(笑)。それと一対一で話すこと。

今までの人生で一番の感動体験を教えてください。

山下:音楽の道に進むことを反対していた父が、応援してくれるようになったこと。

青山:大学4年のとき、ソリストとして初めて舞台に立った「藝大メサイア」公演は忘れられない体験です。1年生から3年生までが合唱を歌い、4年生でオーディションに通った学生がソロを歌う、オーケストラは藝大の先生方という、毎年12月に行われている演奏会でした。3年間いつも後ろから見ていたソリストに自分がなる事ができて、東京文化会館の舞台の一番前に立ち、オーケストラと合唱をバックに歌う。前半などはどのように歌ったか覚えていないくらい緊張しましたし、ソリストとして活動する事の厳しさや難しさを思い知った一夜でしたが、最後まで何とか演奏できた喜びは非常に大きなものでした。終演後に、文化会館の楽屋口で合唱を歌った後輩たちがソリスト全員を讃えて胴上げすると言うのが当時の伝統でした。あれから15年ほどが経ちますが、それ以来胴上げしてもらった事などありませんし(笑)、ソリストとして何とか頑張って行こうと強く思うきっかけになった演奏会でした。

望月:ありきたりですが、カーテンコールで“Bravo!”と声をかけてもらったときは感動します!!

大槻:感動にはそれぞれ種類があるので、一番は選ぶのは難しいです。でも、長い時間をかけて、じわりじわりと大きく膨らみ続けている唯一の感動は、両親から受けた愛です。

河原:初めてオーケストラを振ったとき。ちなみに曲目はカヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲でした。