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Interview@philiahall


無限の可能性に遊ぶヴァイオリン
ヴァイオリン=山根一仁

2012年9月5日(水) 11:30

 

9/5(水) “らん・らん・ランチにいい音楽”シリーズに、ヴァイオリン界期待の高校生、山根一仁さんが登場します。清々しく鋭敏な感性で弾くヴァイオリンはすでに多くの聴衆の心をとらえていますが、公演に向けて改めてご本人にインタビューしました。

ヴァイオリンを始めたきっかけは?

両親がクラシック音楽好きで、小さい頃からよく音楽を聴いていました。姉がヴァイオリンを習っていたので、3才くらいから見よう見まねで弾いて遊んでいました。今でも好きですが、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲が当時から大のお気に入りでした。

2010年日本音楽コンクールの中学生での劇的な優勝は大きな話題になりました。

素晴らしい賞をいただけて大変光栄に思っています。こうしてたくさんの演奏の機会も得られ、とても大きな一歩でした。でも、本選での演奏は自分の出来としては70点くらい。コンクールはあくまで通過点のひとつです。

ヴァイオリニストになろうといつごろ思われたのでしょうか。

小さいころから単純に弾くことが楽しくてずっと続けてきましたが、中学2年生でハチャトゥリアンの協奏曲に集中して取り組んだときに、ショスタコーヴィチと同じロシアの広大な薫りに改めて魅了されて、きっと僕はこれからずっとヴァイオリンを弾いていくんだ、とふと思ったのです。ロシアの大きさに惹かれるのは、北海道育ちという理由もあるかもしれません。昔からよく聴いているヴァイオリニストも、広く温かい音が魅力のオイストラフです。

現在、桐朋音楽高校の2年生。高校生活はいかがですか。

音楽をやっている人たちに囲まれて、毎日がとても楽しくて充実しています。将来一緒に仕事をする仲間たちとはお互いにすごく良い刺激をもらっています。もちろん音楽以外のことでも盛り上がっていますよ。ヴァイオリンは原田幸一郎先生と水野佐知香先生に習っていて、世界の第一線で長く活躍されてきた原田先生はお話するだけで面白くて勉強になりますし、水野先生は6才から習っていて今の僕があるのも全て先生のおかげです。

プログラムの聴きどころを教えてください。

全て今弾きたいと心から思える選曲です。タルティーニはイタリアのバロックの作曲家で、ソナタ「悪魔のトリル」もバロック時代の宮廷音楽風ですが、最後のカデンツァで鬼のようなトリルが出てくる。弾く側は必死ですがお客さまにはそれを楽しんでいただければ。チャイコフスキーはロシアの作曲家で、ワルツ・スケルツォはおどけて戯れるような曲想が大好きで何度も弾いていますが、いつも新鮮な演奏ができるように心がけています。技術的に難しい曲は音程をはずさないことはもちろん大事だけれども、怖がっていてはつまらない演奏になってしまうので、のるかそるかのスリルを楽しみながらもそれを超えた演奏をしたいですよね。イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタは全6曲で、番号順に段々難しくなっていくといわれていますが、この第6番はスペイン風でハバネラのリズムがお気に入りです。プロコフィエフはこれまたロシア。道化とか狂気に満ちた作風で、ある意味ショスタコーヴィチにも共通しますが、当時のソ連の政治的に抑圧された日々の中で作曲されたのです。時代が違っていたらこの天才たちはどんな曲を書いたのかと思うことがよくありますが、皮肉なことにあの時代だからこそ、そういう名曲を書けたと考えると、何ともいえない気持ちになります。ワックスマンのカルメン幻想曲は超絶技巧がちりばめられた、見て聴いて楽しめる曲。速くて難しいところをいかに余裕に見せられるか。ちょっと遊び心を持ってリハと本番で弾き方を変えて、ピアニストがどれだけ合わせてくれるかという駆け引きも好きです。

どんなヴァイオリニストになりたいですか?

僕が目指しているのは、演奏で誰かを勇気づけたいとか気に入ってもらいたいということではなく、作曲家の手紙(楽譜)をいかに面白く届けられるか、です。音を楽しむ「音楽」ですから、真面目になり過ぎずにいつも楽しむ気持ちを持ちながら、ちょっと自分の個性を作品にプラスして、作曲家の真実をお客様に伝える。結果としてお客様が演奏にわくわく興奮して満足していただけたらこれ以上のことはないです。何よりヴァイオリンは無限の音色、音程を出せる夢のような楽器です。自分に確信を持って、これからずっと音楽を奏でていきたい。