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Interview@philiahall


音楽は言葉を超える
オーボエ=ハインツ・ホリガー

2012年10月12日(金) 19:00

 

“世紀の巨匠”の言葉がこれほどふさわしいアーティストもいないでしょう。圧巻のテクニックで音楽ファンの心を鷲掴みにしてきたオーボエ、自身の確固たる美学を貫き高い評価を得る作曲に、旺盛な指揮活動と、類稀な音楽性と探究心から生み出される創作の数々はまさに“ホリガー・ワールド”ともいうべき孤高の領域を確立してきました。来る10月、フィリアホールでの待望の室内楽公演に向けて、ホリガー自身からメッセージが届きました。

今回の一番の注目プログラムが、ご自身が作曲されたチェロとピアノのための「ロマンセンドレス」です。ピアノ内部奏法もある先鋭的な作品ですが、作曲されたきっかけが、シューマンの妻クララがシューマンの作曲したチェロとピアノための「ロマンス」の楽譜を燃やしてしまったというエピソードであるそうですね。「ロマンス」は妻クララとブラームスの不貞を意味したとの説もあります。

その事実を知ったときに大きなショックを受け、以来、ずっと頭から離れませんでした。その思いを抱き続けて15年たち、この気持ちを音楽で伝えるべきときがやって来たのです。「ロマンセンドレス」には私の悲しみ、絶望、怒りが表現されています。心から大切に思っている作品なので、皆さまにご披露できることを大変楽しみにしています。

シューマン、バッハ、ベートーヴェン、イサン・ユンについても教えてください。

シューマンの2曲はいずれもさまざまな楽器での演奏に適応します。異なる楽器で聴くことによって、その曲が持つさまざまな側面が見えてくるのです。バッハやベートーヴェンの作品も必ずしもオリジナルの楽器で演奏する必要がない良い例です。違う楽器を通してこそ、曲の新たなキャラクターが明らかになるのです。イサン・ユンは武満徹と並び、東洋と西洋の音楽を一つに成しえた不世出のアジア出身の作曲家です。私は妻のウルスラとともに、彼が投獄された頃から亡くなるまで25年以上の親交がありました。彼と出逢えたこと、友情の証を多く遺してくれたことにとても感謝しています。ソナタや協奏曲や四重奏曲など、私たちのために本当にたくさんの曲を書いてくれて、今回演奏する「エスパスU」もその一つです。

オーボエ奏者、作曲家、指揮者、いずれも世界を牽引するご活躍を続けられていますが、ご自身のことをどのように考えていらっしゃいますか。

それぞれの活動を分けて考えてはいません。自分は何者かといえば、ただシンプルに“音楽家”です。作曲は10才から、指揮は23才からやっていますし、オーボエは聞いたこと、感じたことを形にする自己表現の道具にしか過ぎません。それは何の楽器でもいいのです。すべてをひっくるめて一つの音楽活動です。

作曲のインスピレーションはどのようにわくのでしょうか。

言葉を超えたもの、言葉の裏に潜むもの、あるいは言葉と言葉の間にあるもの。音楽はそのすべてを表現することができます。だから、いつしか音楽が私の言語となったのです。作曲のコツはもしあったら私が知りたいぐらいですよ!

世界各地での旺盛な活動ぶりからして、まだまだやりたいことをお持ちのように感じます。目標をお聞かせください。

今までどおり、心身ともに豊かでいられるように努力するのみです。