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Interview@philiahall


音楽って楽しい!! その喜びを分かち合いたい
フルート:上野由恵

2011年2月5日(土)18:00
上野由恵

 

誰よりも強い音楽への想いを秘めながら、今まさに飛び立とうとしている新進アーティスト。“女神との出逢い”シリーズは、そんな期待の若手が出演する場でもあります。フィリアホールが是非ご紹介したい演奏家の一人、フルートの上野由恵さんがいよいよ2月に登場します。公演に向けて、フルートとの出会い、プログラムの聴きどころ、趣味・・・など、いろいろとお話を伺ってきました。

音楽を始めたきっかけを教えてください。

両親が音楽好きでクラシックに限らず、いろいろなジャンルの音楽が家にいつも流れていました。ピアノをまず習い始めたのですが、8才のときに、たまたま地元のジュニア・オーケストラのコンサートでモーツァルトのフルート協奏曲ニ長調を聴いて、ピンク色のドレスを着たお姉さんがキラキラ輝くフルートを吹くのを見て、「素敵!私もやりたい!」とすっかり虜になってしまいました。それからは、新聞や雑誌でもフルートという文字があれば、これ見よがしに赤ペンでチェックしたりして(笑)、親を2年かけて説得して、10才で習い始めることができました。とにかく舞台でフルートを吹く人になりたいという想いが強くて、フルートの雑誌で「フルーティストとして活躍している方は東京芸術大学の卒業生が多いんだ」と知って(笑)、小5のときには芸大附属高校に行こうと決めていました。好きで好きで、親にもうやめなさい!といわれるまでフルートを吹いていました。休日は10時間以上も吹いていたこともあります。中学校では吹奏楽部の部長も経験し、念願通り芸高に入学。勢いと熱意だけで合格してしまったような感じで、初歩的な基礎練習からみっちりと、まわりに追いつくために必死でがんばりました。海に山に自然がいっぱいの四国の高松から出てきて、いきなり東京で一人暮らしを始めたので最初は戸惑いもありましたが、クラスメートと夢を語り合ったりして、高校と大学の学生生活は楽しかったです。

2004年東京音楽コンクールでの優勝が、その後の活躍のきっかけとなりました。

コンクールは演奏会とは違って、どうしても演奏の粗探しをされる場ですが、湧き出る気持ちを表現するためには、それを伝えるためのテクニックも必要だということに気づき、試行錯誤を繰り返しながら励む毎日でした。ミュンヘン国際コンクールでは残念ながら途中で落選してしまったのですが、演奏を聴いていただいていた地元の方たちから「とても良かった!次のコンクールの時にまたきてほしい!」とたくさん声をかけていただき、自分の音楽が言葉をこえて伝わったのが本当に嬉しかったです。2007年の日本音楽コンクールの優勝のときも、聴衆賞をいただけたのは何よりも嬉しかったですね。

上野由恵

今回のプログラムについて
フルートの多彩な魅力が満載のこだわりのプログラムです。バロック時代から現代音楽まで、そして超絶技巧から精神性の高い作品まで、フルートの表現の無限の可能性を感じていただけるのではと願っています。モーツァルトロンドは女神《ミューズ》シリーズのリサイタルの幕開けはこれしかないと。どこまでも美しく表情豊かなモーツァルトで、日常から離れた音楽の世界に誘います。バッハ無伴奏パルティータはフルーティストにとってとても重要な作品の一つです。以前ドイツのライプツィヒを演奏旅行で訪れたときに、聖トーマス教会やお墓に行って、バッハは実際にこの世に生きていたんだと改めて実感し、それからバッハとしっかり向き合うようになりました。一生をかけて勉強していく作品ですが、今の自分ができるすべてをこの宇宙的で壮大な作品に賭けたいと思います。ドゥメルスマンは、フルートのサラサーテと称される19世紀前半に活躍した演奏家・作曲家。ウェーバーの歌劇「オベロン」の中から美しいアリアの部分をフルートの超絶技巧を駆使して編曲された、華麗で鮮やかな1曲です。この曲は、2005年芸大首席卒業生に与えられる御前演奏会で披露した曲で、皇太子様から「すごく良い曲ですね!気に入りました」とお声がけいただいた想い出の曲でもあります。後半の1曲目はドビュッシー牧神の午後への前奏曲。最初に吹くドのシャープは、実はフルートの中でもっとも不安定な音で、それを逆に利用して色彩豊かで印象的な曲を作ったドビュッシーはフルートをよく知っているなと感じます。イサン・ユンは、日本や韓国などの伝統音楽の技法を取り込んで、音色、表現エネルギーともにフルートの新たな一面をお聴きいただけます。アジア人としてのルーツを投影し、新しさだけでなく魂のこめられた作品はすごく共感でき、想い入れがとくに強い作曲家の一人です。大学院の修士論文はイサン・ユンについての研究でした。最後は、フルートをお好きな方にとってはハンガリー田園幻想曲でおなじみのドップラー、哀愁漂う東洋的なメロディーと、舞曲風なリズム、楽しく聴いていただけるバラキエの歌です。ピアノ入江一雄さんは2008年日本音楽コンクールの優勝者で、一年近く一緒に演奏しています。サポートするところと主張するところの絶妙なバランスといい、素晴らしい音楽を奏でる方で、今回の共演もとても楽しみにしています。

どんなフルーティストになりたいですか?

何よりもお客様に“幸せ”を感じていただけるようなフルーティストになりたいです。そのためにも、音楽をもっと深く掘り下げて、真髄を求め続けていきたいです。

音楽以外に関心のあることは何ですか?

読書が好きです。小説、伝記、哲学書、料理本なんでも!今はプルーストの“失われた時を求めて”を読んでいます。20代のうちに一度読んでおきたいと思って。日本人作家では三浦綾子、藤沢周平など、全ての作品を読破しました。あと、料理も好き!創作料理中心で、刻んだり、混ぜたり、即興でおたふくソースを入れたりとか(笑)。

幼い頃は夕方まで海で泳いだり山に登ったりの健康優良児。「肺活量が鍛えられたのかフルートを演奏するときに役立っています」と明るく笑いながら語る上野さん。天真爛漫なお話ぶりからは、音楽を心から楽しみたいという熱い想いがひしひしと伝わってきて、ますます応援したい気持ちにさせられました。2月のコンサートでは、どんな“幸せ”を届けていただけるのか、どうぞご期待ください!