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Interview@philiahall


偉大なるヴァイオリニストたちの想いを背負い、ひとりステージに臨む。
ヴァイオリン:南 紫音

2011年8月20日(土)18:00
南 紫音

 

フィリアホールのステージには3度目の登場となる南紫音さん。国内外のオーケストラとの協演やリサイタル、CDリリースなど、ここ数年目覚しい活躍ぶりですが、実はまだ桐朋学園大学4年生。その可憐な容姿に秘めた気迫と情熱をもって、若きヴァイオリニストが今回挑むのはイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲。大きなチャレンジを前にして、心境をうかがいました。

1月に都内ホールで初めての無伴奏リサイタルをされました。抜群の集中力としなやかな力強さが印象に残っています。

ピアノとのデュオやアンサンブルでは音と音の対話がとても重要ですが、無伴奏の場合は舞台に立つのはたった一人です。作曲家とのつながりをいつも以上に強く感じ、ホールの中に存在するさまざまなものの息遣いを曲とともに感じるような、普段のステージとは全く違った空間でした。

自身ヴァイオリンの名手だったイザイが作曲したこの無伴奏ソナタ6曲は、それぞれが名ヴァイオリニストに捧げられ、多彩なキャラクターをもち、現代のヴァイオリニストにとっても非常に魅力的な作品かと思います。

ヴァイオリンという楽器はやはり旋律楽器ですので、長い歴史を見てもアンサンブルやオーケストラでの曲がほとんどです。しかし多くの作曲家にとって、とても魅力的な楽器であったと思います。バッハはこの楽器にあえて、高度な技術が必要とされる多声的な音楽を書きました。その斬新さは当時きっと聴き手をとても驚かせたと思いますが、しかし今では純粋に音楽の美しさを感じさせてくれる作品として誰もが知っていますし、ヴァイオリニストにとっては技術的にも音楽的にも必ず立ち戻るべき場所となっています。1月に演奏したバルトークも、1楽章にはシャコンヌのテンポで、2楽章はフーガと書いてあったり、まるでバッハへのオマージュのようです。イザイにもバッハの作風が大きく取り入れられていますが、それだけでなく、この曲を演奏していると、自身もヴァイオリニストであったイザイやそれぞれの曲が捧げられた多くの偉大なヴァイオリニストたちの想い、歴史を強く感じます。楽譜に書いてあるアーティキュレーションやスラーやボウイングを見るだけでも音楽が聴こえてきますし、演奏が残されているクライスラーやシゲティなどの(イザイ以外の曲でも)録音を聴くと、それぞれ献呈されたソナタの音楽的なアイディアにつながってきます。もう会うことはできないけれど、もしかするとイザイは楽譜を通してたくさんのアドヴァイスやメッセージを現代の私たちに残してくれたのかもしれません。今回の演奏会では、イザイをはじめとするたくさんのヴァイオリニストたちの想いをいつも背中に感じながら演奏したいと思っています。

南 紫音
Photo©Ariga Terasawa

6曲それぞれとの出会いは?一番好きなのは何番でしょうか。

1番はじめに演奏したのは3番のバラードでした。この曲をきっかけに、独特の和声感や幻想的な風景、ヴァイオリンという楽器がもつヴィルトゥオーソな一面、そして厳格なバッハが背後に聴こえてくるイザイに深く魅了されて、はじめは遊びのような感じでしたが、たくさんの曲を弾くようになりました。特に記憶に残っているのは、ロン=ティボー国際コンクールのときにも演奏した6番、そして私にとって初めてのレコーディングとなった4番です。1番好きなのは、とよく聞かれますが、いつも決めることができません。それぞれが欠かすことのできない魅力をもった曲ばかりです。

現在使われている楽器はストラディヴァリウス「ヨアヒム」ですね。

「ヨアヒム」は日本音楽財団からお借りしていまして、この春から弾かせていただいていますが、なんといっても音色が素晴らしく、どんな弱音でもとても魅力的な音がでます。自分の表現したい事がこの楽器を通して何倍にもなって音となりますので、楽器から教わる事が非常に大きいです。今回のイザイ全曲演奏会をこの楽器とともに迎えられるのはとても幸せです。

演奏活動でお忙しい中、学校生活はいかがですか。また、卒業後のご予定はお決まりでしょうか。

学校では多くを学んでいますし、音楽を追究している仲間と話すのはとても楽しいです。とくにオーケストラ、室内楽やバロック・ヴァイオリンを学ぶことはすごく勉強になりますし、常に音楽にあふれた環境ですので、やりたいことがたくさんでてきます。卒業後のことは考え中ですが、ヨーロッパに行きたいと思っています。

音楽以外では、何かご趣味はありますか。

最近はお料理をするのが好きです。といってもなかなか時間が取れず、簡単なものしか作れませんが、とても良い気分転換になります。

前回2008 年のときのインタビューで、「いろいろな場所に行って、いろいろな方と出会って、自分の進むべき道が自然と見えてくるはず」と仰っていました。それからまだ3 年ですが、何か変化はありましたか。

とにかく弾きたい曲やチャレンジしてみたいプログラムがたくさんあるので、時間が足りないです。今はそれをひとつひとつ消化していければと思っています。また、卒業後は環境が変わることによって、新しい世界を見ることができればと願っています。

まずは、8月の公演、心身ともに充実したイザイ全曲を楽しみにしています。