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Interview@philiahall


時代を駆ける、天才ホルン奏者
ホルン=ラデク・バボラーク

2013年1月18日(金) 19:00

 

今年からスタートした、世界の最前線で活躍するアーティストによる“JUST ONE WORLDシリーズ”の第5回目に登場するのは、チェコが生んだホルンの名手、ラデク・バボラーク。金管楽器の中でもとくに音を外しやすく難しいホルンを、正確無比のテクニックでいとも軽々と完璧に吹きこなす演奏はまさに圧巻。1994年に18才でミュンヘン国際コンクール優勝以降、数々の名門オーケストラの首席奏者を経て、今はソリストとして世界を股にかけて活躍中です。普段は気さくで笑顔の絶えないナイスガイで、“バボちゃん”の愛称ですっかり日本でも親しまれています。1月のフィリアホールの公演に向けて、メールでインタビューをお願いしました。

8才からホルンを吹き始めたとのこと。きっかけは?

リコーダーとピアノをやっていましたが、永久歯が生えてきてからホルンを始めました。父がホルン奏者で、教える仕事もしていたので、私も当然のようにホルンをやらされました。父は大変厳しく、とくに指導においては妥協しない人でした。

プロの音楽家になろうと決めたのはいつごろでしょうか。

母方の親族は皆音楽家で、母はピアノの先生、おじはトランペット奏者でブラスバンドの作曲家、姉はオーボエをやっています。私は何度かのレッスンで才能を見出されたため、周りがホルンの道へと進ませたのです。他に選択肢はありませんでした。でも、共産主義時代の東欧では音楽家という職業は特別でした。音楽や芸能の仕事に就けば、西側諸国や日本にも出向いていける可能性があったからです。

数々の名門オーケストラのホルン奏者を歴任され、2009年にはベルリン・フィルを辞められました。

オーケストラでの演奏は大好きでした。16才でプラハ・フィルに入団し、その後、チェコ・フィル、ミュンヘン・フィル、ベルリン・フィルの首席奏者として演奏してきましたが、その中で多くのインスピレーションを得ることができ、大変素晴らしい貴重な時期でした。
16年近くオーケストラを経験しましたので、今はそこから離れて、ソリスト、そして指揮者としての時間を十分に楽しんでいます。

ソロ、室内楽、協奏曲とおびただしい数のCDを今までにリリースされています。バッハの無伴奏チェロ組曲をホルン一本で吹いたり、オーケストラスタディ(交響曲などのソロパートの抜粋)のCDを出したり、楽器の限界の追求にも余念がありません。あらためて、ホルンの魅力は何でしょうか。

ホルンの最大の魅力は、ホルン同士、あるいはそれ以外の楽器でも、室内楽やブラスバンド、オーケストラなど、どんな編成の中でも一緒に演奏できることです。それにホルンは本来狩猟の楽器ですから、とてもパワフルな音が出せます。練習は大変ですけどね!

バボラークさんの柔らかなホルンの音色をフィリアホールで聴けるのが楽しみです。今回のリサイタルのプログラムは、前半がドイツもの、後半がフランス小品集です。

バッハ、ベートーヴェン、ブラームス、シュトラウス、ブルックナーといったドイツの作曲家は、私にとって非常に重要な存在です。彼らの作品をホルンで演奏していると、いつも幸せな気持ちになります。一方でフランス作品も大好きで、強さや激しさはない代わりに、細やかなニュアンスと色彩、さまざまな香りがあります。このドイツとフランスの組み合わせのプログラムは、演奏側にとっても聴衆側にとっても興味深く、きっと楽しんでいただけるものと思います。

最近は指揮も始められています。まだ30代半ばのバボラークさんですが、今後の音楽活動のビジョンを教えてください。

将来的には、ソロ、室内楽、指揮と、それぞれの活動を確立したいと考えています。一番重視しているのは、新しく立ち上げたオーケストラ「チェコ・シンフォニエッタ」を軌道に乗せることです。60人くらいの編成で、主にチェコの親しい友人たちで構成しています。
彼らとはここ数年楽しく活動してきたので、今後オーケストラとしての活動が継続していければと願っています。

一流の音楽家になるためには何が必要でしょうか。ぜひ学生たちにアドバイスを。

私からのアドバイスはいたってシンプルです。自分が尊敬できて、心から音楽を愛している人を見つけることです。その人が、音楽へのさらに深い愛情と理解をもたらしてくれるはずです。逆にそのような指導者なくしては、音楽家への道のりは果てしなく長く険しいものとなります。

バボラークさんにとって、ずばり“音楽”とは何でしょうか。

「音楽というものは定義することができない。」これはかの名指揮者、チェリビダッケの残した言葉です。彼は私の心を開かせてくれました。

音楽以外でご趣味はありますか。

とくにこれといった趣味はありませんが、料理をすることが好きで、料理やキッチンについてあれこれ知るのも楽しいです。まあ、コンサートのありとあらゆることを準備するのが趣味といえば趣味ですね。

今まで訪れた国や場所で、一番印象深かったのはどこですか。

難しい質問ですね。いろいろあり過ぎてとても答え切れません。

サイトウ・キネン・オーケストラや水戸室内管弦楽団、それにソロや室内楽でもたびたび来日されています。

日本は大好きです。周りの多くの演奏家も日本が好きですよ。天国のように居心地がよい国ですから。こんなに何度も来日できて本当に嬉しいです。

今回のコンサートシリーズでは、次にフルートのエマニュエル・パユさんにもご出演いただきますが、何か一言、お願いします。

彼はベルリン・フィル以前からの長年の友人です。室内楽でもよく共演して、一緒に演奏を楽しんできました。彼はまさに“フルート・キング”です。彼のような素晴らしい音楽家がもっと出てくるといいですね。