Fhilia Hall
アーティスト インタビュー

金 聖響(きむ せいきょう)
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
常任指揮者

2013年7月10日 14:00コンサートの詳細

 

神奈川フィルを力強く牽引する、若きリーダー。

神奈川フィルハーモニー管弦楽団は、2013年11月末までの公益財団法人化を目指し、約3億円の負債を解消すべく、応援マスコットの名前にちなんだ"ブルーダル基金"を設立。各地で活発に支援活動を続ける中、7/10フィリアホールでも基金コンサートを開催することになりました。来る10月からはフィリアホールとの共催で、新シリーズ"神奈川フィルの名手による室内楽"がスタートするのも見据え、神奈川フィル御披露目のプレコンサートでもある7月公演。出演する神奈川フィル常任指揮者の金聖響さんにお話を伺いました。

 

 

2009年に神奈川フィル常任指揮者に就任されて4年。厳しい経済情勢の中、オーケストラにとっては苦難の時代で、ブルーダル基金の活動も今佳境を迎えています。

 

全員で薄皮1枚ずつの努力を積み重ねています。オーケストラ事務局の裏方たちがまさに身を粉にして奮闘してくれたおかげで、皆さまの寄付金が今2億円を超えて、公益財団法人化にも道筋が見えてきたところです。ブルーダル基金を通して神奈川フィルは良くも悪くも注目され、聴きにきてくださるお客さまも飛躍的に増えましたが、感謝と謙虚さを決して忘れてはいけないですね。演奏面でも、マーラー・シリーズや近現代の難しい曲を良く演奏できるようになってきましたが、プロとしてはそれができて当然ですし、今の状況に甘んじることなく、僕も含め、団員ひとりひとりがさらに研鑽を積んで、皆さまに恩返しをしていかなければいけないと思っています。

 

歯切れの良い発言、物事の把握力とリーダーシップに満ちた聖響さんですが、指揮者になられた経緯を教えてください。

 

大阪で7才くらいからヴァイオリンやピアノを習っていましたが、音楽にのめり込んだのは14才で家族で渡米してから。ワシントンD.C.、メリーランド、ノースカロライナとか東海岸を転々としましたが、各地のユースオーケストラでコンサートマスターをやりました。アジア人として蔑視されることもある一方、自由の国ですから突き抜けた人たちが多く、さまざまな面でオープンな環境が身に馴染んだのだと思います。ヴァイオリンが上手くなりたくて物凄く練習しましたが、上には上がいるもので、楽器以上に何かを表現できるものは何かと考えたら、指揮者だ!と。楽器が弾けなくてもできるという甘い考えもありました(笑)。音大は親がダメだというので、ボストン大学の哲学科にすすみました。ボストン交響楽団と小澤征爾さんがいましたから。お金もなかったですし、週5回アルバイトをして、演奏会に行きまくって、小澤先生の追っかけをして、師事して・・と、指揮者の道が始まったわけです。

 

その後ウィーンで学び、最近もベルギー・フランダース交響楽団首席指揮者を務められました。日本、アメリカ、ヨーロッパとさまざまに経験されて、現在の音楽観をお聞かせいただけますか?

 

個人の思想、哲学、宗教などは本来不問であるべきですが、認め合いながら論じ合うことは大いに意味のあることで、それこそが成熟した社会への第一歩だと思います。その点、日本は、多様で異質なものと触れ合う環境がまだ少ないのかもしれません。誤解を恐れずに言えば、僕は神様なしには音楽も人間も存在しないと思っています。アメリカに行っていなかったら、もしかしたら今頃生まれ育った大阪で音楽以外の仕事をしていたかもしれないし、今指揮者をやっていること自体が神様のくれた奇跡です。ベートーヴェンは晩年に“内なる神”に気づいて偉大な作品を残しました。ひとりひとりの信じるものや自意識―朝どう起きて、何を食べて、いかに生きていくか―が確立されて、その成熟した共有ができたときに、どうオーケストラが演奏できるのか、聴衆はどう享受できるのか、興味があります。

 

フィリアホールでの7/10公演は、平日午後の1時間、オーケストラの名曲プログラムを聴かせていただきます。

 

天才肌の首席チェリスト・山本裕康さんとコンサートマスターの石田泰尚さんを筆頭に、精鋭弦楽アンサンブルが集います。せいぜい300?400年のクラシック音楽の歴史で、本当に名曲と言えるものは意外に少ないのですが、それが今回そろっています。作曲家が醸し出す“霊感”を、生の空気の振動が織り成す物語としてぜひ体感していただきたい。100年以上も昔の人間が書き残したものを現代の我々が演奏して再現するということは、非常に神聖な行為だと思うのです。高尚ではないけれど、崇高なもの。身なりはジーパンでも何でも良いですが、心の中はいつも襟を正して聴いていただけたらと思います。

 

指揮者になりたいという学生にメッセージを。

 

どうぞご勝手に(笑)。映画監督や野球監督もそうだけれど、道らしい道はないです。もしアドバイスできるとしたら、これは僕の唯一自慢できることでもありますが、絶対にあきらめないこと!

 

ご自身の今後のビジョンを教えてください。

 

神奈川フィルとしては、近現代作品や新たな委嘱作品など、意欲的なプログラムに引き続きチャレンジしていきたいです。僕は今43才、指揮者としてはまだまだ若造ですから、来年もドイツとかオランダとかヨーロッパでの指揮の仕事もいただきながら、自らが音楽的にどう成長していけるか楽しみです。近いところでは、異才の作曲家・佐村河内守さんの交響曲「HIROSHIMA」の全国ツアーがあって、いつか海外でこの意義深く素晴らしい名曲を披露できたらと願っています。

 

 

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