Fhilia Hall
アーティスト インタビュー

アラベラ・美歩・シュタインバッハー
ヴァイオリン

2014年12月 5日 19:00コンサートの詳細

 

音楽は私たちに力をくれる、人生の万能薬。

今、世界で俄然注目を集めるヴァイオリニスト、アラベラ・美歩・シュタインバッハー。ミュンヘンでドイツ人の父と日本人の母の間に生まれた彼女は、ゲルギエフ、マゼール、パッパーノ、シャイーといった数多くの巨匠指揮者たち、世界を代表するオーケストラとの共演を次々と成功させ、今やドイツ音楽界の新時代を担う地位を確立しています。繊細さと力強さをあわせもつ演奏で、バッハから近現代作品までレパートリー豊富な彼女が、フィリアホールに12月5日(金)満を持して初登場。公演に先立ち、貴重な休暇中の合間を縫ってインタビューにお応えいただきました。

 

 

フランク、R.シュトラウスとロマン派の傑作を中心に、モーツァルトとプロコフィエフを組み合わせた、幅広い時代を横断するプログラミングですが、その意図をお聞かせください。

 

まず、モーツァルトはこのソナタに限らず、ヴァイオリン協奏曲なども含めて子どもの頃から非常に慣れ親しんできた作曲家です。私は幼少より両親の仕事の関係で歌手に囲まれ、モーツァルトのアリアなどをたくさん聴いて育ちましたので、私の幼少期との関係性が深い作品をまずは選び、R.シュトラウスとフランクは、9月にリリースする新しいCDから選曲しました。シュトラウスのヴァイオリン・ソナタは非常にオペラ的な音楽だと思います。彼はオペラをたくさん作曲していたこともあり、その影響がこの作品からもみることが出来るかと思います。また、私は20世紀の作品を演奏するのが非常に好きで、バルトークやベルク、ショスタコーヴィチなどを好んで演奏しています。プロコフィエフの無伴奏ソナタは、プログラムの中に変化を持たせようと思い入れました。

 

ヴァイオリニストになろうと思ったきっかけは何でしょうか?

 

私が3才の時に両親が、日中何か興味を持って集中出来る事が見つかれば良いのでは、と考えました。両親は二人とも音楽家なので、音楽が良いのではないかということになりました。ヴァイオリンは小さな子供にも非常に良い楽器ですし、たまたま近所にスズキメソードの指導をしている先生がいらしたので、母の薦めの元、一度実験みたいな感じでレッスンを受けました。私が好きになるかどうか、楽しいかどうか、プロになるかどうかではなく、まずヴァイオリンをやらせてみようということで始めました。

 

9才からミュンヘンで、ユリア・フィッシャーやリサ・バティアシュヴィリなど大変優秀なアーティストを育てた名教師、アナ・チュマチェンコさんに師事されています。彼女から何を学びましたか?

 

彼女が素晴らしい先生だということは言うまでもありませんが、本当に温かい人間性を持った方です。私達生徒全員にとって、母親のような役割を果たしてくださった先生です。テクニック、幅広いレパートリーを学んだということはもちろんですが、それ以外に音楽を学ぶというのが常にレッスンの中心でした。また、彼女は私を守ってくれた存在でもあります。子供の頃から大きなコンサートに度々出演したり、音楽を仕事にするということは、繊細な子供にとってはあまり良くないことがあります。そういったことから彼女は私を守ってくれました。私は、始めは小さなコンサートや、学生オーケストラとの共演などでレパートリーを増やして演奏経験を得た後に、18才から本格的にヴァイオリニストとして大きなコンサートに出演するようになりました。

 

ソロ活動の他に多数の一流オーケストラ・指揮者の方と共演されています。特に感銘を受けたアーティストの方がいらっしゃれば教えてください。

 

重要な方はたくさんいらっしゃいます。私にオーケストラの仕事を紹介してくださっただけではなく、その音楽性に大きな影響を受けた指揮者はたくさんいるのですが、数人挙げるというのは非常に難しいですね。最初に共演したのはヴァルター・ヴェラー、そしてマレク・ヤノフスキです。2004年にはネヴィル・マリナーと共演しました。また、ロリン・マゼール、クリストフ・フォン・ドホナーニも私にとって大きな影響を与えて下さった方々です。ただ、音楽性について最も影響を受けたのは、子供時代に歌手に囲まれて育った経験かもしれません。また、レコーディングで言えばフリッツ・ヴンダリッヒですね。実は父親と共演をしている方なのですが、彼らの演奏を聴けたことは、私の音楽性に非常に強い影響を与えたと思います。歌手がどのように音楽をつくるかを見られたことにも、私は非常に多くの影響を受けて育ちました。
もちろんキャリアの点で言えば、多くの指揮者の方が私を助けてくださったと思います。

 

1716年製のストラディヴァリウス「ブース」をお使いです。感想はいかがでしょうか。

 

8年前より、日本音楽財団からこのヴァイオリンをお借りしているのですが、私が最初に弾いた曲はバッハの(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番より)シャコンヌです。この曲は、楽器が自分の演奏に対してどのように反応するかをみるのに非常に良い作品なのですが、すぐにこの楽器とは仲良くなれるとわかりました。もちろん私も演奏スタイルを変えてきましたし、ヴァイオリン自体も変わってきました。私達は共に成長してきたと言えると思います。

 

リサイタル以外にヴァイオリン協奏曲もたくさん弾かれていると思うのですが、特にお気に入りの曲があれば教えて下さい。

 

そうですね、一つを選ぶというのはとても難しいですね。私はモーツァルトやベートーヴェン、シューベルトといった本当に古典的なレパートリーから勉強を始めたのですが、それはチュマチェンコ先生の影響が大きいです。これらのコンチェルトには、極めて難しいとても繊細なフレーズがありますし、本当に文化的に演奏しなければならないという面がある為、これらのコンチェルトから勉強を始めました。13?14才くらいになって20世紀のコンチェルトも演奏するようになったのですが、もうそれは、本当にとても興奮する、まるで心が燃え上がるような経験でした。例えばプロコフィエフやショスタコーヴィチ、ブリテンやベルク、ヒンデミットなどの作品は本当に私の心を掴みました。これらの作品を演奏する機会があれば喜んで演奏しますが、ブラームスやベートーヴェンなどを演奏しているときには本当に美しい音楽だと感じます。どの作品が好きかというはその日の気分によっても変わりますので、なかなか簡単に答えることはできません。

 

日本とドイツ、それぞれの国につきまして、思うところがありましたら教えてください。

 

日本は私の人生にとって、大変重要な存在です。小さい頃には、毎年たくさんの夏を日本の祖父母の家で過ごしました。今でも日本に到着するたびに、日本ならではの空気を感じたり、日本語を聞いたりすると、子供の頃を思い出しますね。とはいえ、私はドイツで育ちましたので、自分をドイツ人としてみることが多いのですが、日本的な要素も自分の中に持っていると思います。例えば、コンサートの前には必ず瞑想をします。自分の空間に入って静かなときを過ごすのですが、これはどちらかと言うと日本的な要素ではないでしょうか。ドイツ的ではないと私は思っています。音楽性に関しては、ヨーロッパで父から音楽を学びましたのでヨーロッパ的かと思います。私の中にはドイツと日本の両面があります。日本のことは大好きですし、いつも繋がっているという気持ちがあります。

 

お休みの日はどのように過ごしていらっしゃいますか?

 

今回は休暇中の来日なので鎌倉を訪れたりしますが、私の住んでいるミュンヘンで自由な時間があるときは、出来るだけ普段会えない友達に会ったり、ジャズがとても好きなので、ジャズコンサートに行ったりしています。読書も好きですし、日記をつけることも好きです。これらは私にとって、とても重要なことです。また、一年に一回は休暇をとり、ヴァイオリンを持たずにどこかへ出かけるようにしています。今回は2週間、日本音楽財団にヴァイオリンを預けてヴァイオリンを触らない期間というものを作りました。1年間の中で最低1?2週間はヴァイオリンを触らない期間も必要だと、チュマチェンコ先生も仰っていました。自分が休息することによって、再び演奏するときにフレッシュな気持ちで演奏できるのです。

 

これからヴァイオリニストを目指す方(若い方)にメッセージをお願いいたします。

 

練習をしすぎないこと(まあこれは冗談ですけど…)、バランスをとるということが非常に大切です。集中して練習をする、音楽を作るということは大切なのですが、それだけではなくて、人生を生きることによって音楽を作るということが大切だと思います。練習からだけではなく、非常に多くの経験によって音楽性というものは発達していくと思いますので、若い時に演奏活動をしすぎることを私はあまりお勧めしません。あらゆる経験によって音楽性というものは発達してゆくと思いますので、音楽以外の時間を持つということは非常に大切なのです。
もうひとつ重要なことは、楽しんで演奏をするということですね。決してやらされているという感覚にならないように。ヴァイオリンを弾くということは楽しいことだという感覚を持ち続けることが大切です。

 

シュタインバッハーさんにとって「音楽」とはなんでしょうか。

 

音楽というのは、私にとって食事をしたりすることと同じです。私の人生そのものと言う事もありますし、生活のバランスを得るために必要なものだということもあります。ヴァイオリンを弾くことは、自分を表現するために本当に大切なことなのですが、だからといっていつも演奏をしていなければならないということではありません。音楽というのはすべての人類にとって本当に大切なものだと思いますし、私たちをどこか違った世界に連れて行ってくれるものでもあります。また、人々から感情を引き出してくれるものでもありますし、慰めにもなるものです。悲しいときに音楽を聴くと、自分は一人ではないと感じることもできると思います。音楽は莫大なエネルギーを持っていますし、疲れているときに音楽を聴くと力をもらえることもあります。不思議なことですね、音楽は手に持つことも出来ませんし、目に見えるものでもないのですが、音楽は本当にすごい力を持っているものだと思います。人生のエリクシール(万能薬)。魔法みたいなもので私たちに力を与えてくれるものです。

 

 

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