Fhilia Hall
アーティスト インタビュー

ヘーデンボルク・直樹 チェロ

2015年12月 2日 11:30コンサートの詳細

 

ウィーンの現在(いま)を感じるチェロ!

冬の始まり、12月の《らん・らん・ランチにいい音楽》では、ウィーン・フィルのメンバーとして国内外で大活躍の若手チェリスト、ベルンハルト・直樹・ヘーデンボルク(ヘーデンボルク・直樹)氏がフィリアホールに初登場!スウェーデン人でヴァイオリニストの父と日本人でピアニストの母をもち、兄(ヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルク氏)もウィーン・フィルのヴァイオリニストと、まさに音楽一家に育った俊英です。期待が高まる公演を前に、ヘーデンボルク・直樹氏にメールでお話を伺いました。

 

 

オーストリア・ザルツブルクで音楽に囲まれた環境で育ち、12歳でデビューと、早くからチェロという楽器に親しまれていたとのこと。チェリストになろうと決めたきっかけは何だったのでしょうか?

 

父がヴァイオリン奏者であり、兄が既にヴァイオリンを始めていた為、3人もヴァイオリン弾きはいらないということで、母が好きだったチェロを5歳から始めることになりました。13歳になった頃、学校の友達から手に入れたAC/DCのロックを聴いていたら、父に「そんな音楽を聴いているなら、チェロの練習なんか止めてもいい」と言われ、チェロの無い人生をイメージしてみました。そうしたらなんとなく悲しくなってきて、自分はチェロを続けるべし、と心に決めることに。それ以来、その気持ちが揺らいだことは無いです。

 

13歳から世界的チェリスト、ハインリッヒ・シフ氏に師事されています。彼から教わったことの中で、特に印象的だったことを教えてください。

 

そんな時に出会ったハインリッヒ・シフ氏。常に6人ぐらいの少人数のクラスを教えていたシフ先生は私にとって第二の父親のような存在です。ザルツブルク付近のアッター湖の先生の家に定期的に2、3日の合宿に生徒全員で集まり、一日中レッスン、練習のほか、湖で泳いだり、ボートを漕いだり、卓球、ビリヤードも楽しみ、そこにある音楽書を全て読み、晩御飯は先生の手作り料理を囲みながらそれぞれの時代の音楽観、美意識に関して論議したり、音楽家の在り方、文化の中での音楽の位置付け等を話し合い、様々な録音を聴き比べて意見の交換をして、一緒に映画を見てコメントしたりしていました。13歳から21歳まで、音楽家として一番成長する時期をずっと見守ってもらい、今になって、どれだけ幸せだったかと実感しています。いま自分が創る音一つ一つ、弓の動き一つ一つ、自分が感じる和音一つ一つ、全てシフ先生に感謝しています。

 

現在はウィーン国立歌劇場管弦楽団、さらに2014年からウィーン・フィルのメンバーとして、ウィーンを拠点に活躍されています。現在の欧州やウィーンの音楽シーンの印象を簡単に教えてください。

 

音楽都市としてのウィーンは、いわゆるクラシック時代のハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトなどが活躍したのち、音楽の発展の過程ではしばらく影が薄くなります。その後、ブラームスやブルックナー、マーラー、シェーンベルクなどが生まれる訳ですが、ウィーン国立歌劇場管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の始まりはそのぐらいの時代まで遡ります。私が17歳で初めて体験したウィーン楽友協会のホールでの演奏会前の鳥肌が立つような期待に満ちたざわめき感、立見席まで凍りつくような緊張感が伝わる透明感のある音響のウィーン国立歌劇場でのオペラ体験、これらはこの数百年、途絶えることのなかった音楽感の蓄積と発展、伝統の継続に基づいて成り立っています。音楽は一時のイベントではなく、人それぞれの価値観、世界観の賜物として、時代を超えた、人間の感覚を刺激し深める芸術として、ウィーンには自然と存在している気がします。

 

一方で、日本でも定期的な公演や、神戸国際芸術祭の音楽顧問を務められるなど、精力的に活動されています。日本の聴衆の印象を教えてください。

 

日本は本来の伝統芸術や伝統音楽を大事にすると共に、明治維新以降に早くからクラシック音楽を取り入れた為、音楽鑑賞を始め、楽器奏者の育成システムも含めて既に数世代に渡って誇るべき歴史を残してきています。それだけ耳が肥えている訳ですし、音響的にも素晴らしいホールが沢山ある中、日本の聴衆は世界中でも最も集中して耳を澄まして音楽を受け止めてくれる聴衆だと思っています。

 

オーケストラ、ソロ活動のほか、室内楽の活動も熱心に行われています。それぞれの編成での演奏の面白さ・醍醐味を簡単に教えてください。

 

チェロという楽器は本当の独奏は稀な機会なので、常に共演者がいます。それでも、それぞれの編成は基本的な存在の形が違う気がします。例えれば、ソロは音楽家個人としての芸術の極みの追求がメインだとすると、室内楽は、一番仲の良い友達か家族との会話みたいなものかと思います。ソロは孤独な世界として妥協の余地のないものだとすると、室内楽は常にお互いを気遣い合いながら密に音楽を共感していくものかと思います。それに対して、オーケストラの世界はもう少しスケールの大きい共存、人間の社会をそのまま表しているように思えます。ソロでは自分の人間としての限界を試してみる、室内楽では身近な人との対話の中に居心地の良さ、共に発展の可能性を見つける、オーケストラでは社会の中の自分の居場所を見つけて役割を把握し、様々な人間の集まりの中で同じ方向を向いてしか表現できないスケールの大きい世界を楽しむといった感じでしょうか。

 

お休みの日はどのように過ごされていますか?

 

最近になってですが、短い時間でも大自然の中に身を置くことがどれだけエネルギーを与えてくれるかを発見したので、半日でも時間と余裕がある時は山や森に行って静かにすることを楽しみにしています。あとは、音楽を聴き始めると止められなくなるので、一日中レコードやCDを聴いていることがよくあります。

 

一流の音楽家になるためには何が必要だと思いますか。

 

まずは興味心だと思います。今の時代は、過去の歴史や芸術といったものが全て同時に存在する時代なので、膨大な量の既に存在するものを受け止めて、更に前進しようとするエネルギーも必要かと思います。あとは、継続です。楽器奏者としての生命は40年、50年といった単位なので身体の管理も大事ですが、何よりも音楽を好きでいることを毎日の課題の中で見失わないことが一番大事だと思います。

 

フィリアホールのお客さまにメッセージをお願いします。

 

メイン曲のベートーヴェンのチェロ・ソナタ第3番は、チェロ・ソナタの中で一番希望に満ちた曲です。一楽章にはバッハの受難曲のアリアが組み込まれていたりもしますが、イ長調の明るい響きで軽やかな終楽章で終わります。「おとぎ話」と「森の静けさ」は共に目を閉じてゆっくり聴いてみてください。きっと色々な風景や物語が浮かび上がってくると思います。

 

 

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