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塚越慎子 (マリンバ)

出演日:2016年10月23日(日)14:00

Sunday 23 October 2016 , 14:00

奥深き「マリンバ」の世界へようこそ!

「音楽」をひとことで言い表すのはとても難しいのですが、いつか自分の表現方法として、自然になったらいいなと思います。音楽のすばらしさに触れ、そして音楽を通じて人とつながり、その世界を共有できることは、私にとって大きな喜びです。

今回のプログラムは、トークを交えて聴ける前半がクラシックの名曲、後半のリサイタルはマリンバのために書かれたオリジナル曲で構成されています。それぞれの聴き所を教えてください。

「マリンバ」はソロ楽器として確立してから、まだ100年と経っていない、とても新しい楽器です。そのため、クラシック音楽の歴史を作ってきたバロック、古典、ロマン派などの作曲家によるオリジナル曲はなく、ほとんどが現代に作曲されています。オリジナル曲は、マリンバの音色や特性を生かした奏法がふんだんに取り入れられ、楽器のおもしろさをダイレクトに感じることができます。クラシックの名曲はマリンバ用にアレンジされていますが、原曲の素晴らしさにマリンバの魅力が加わった、「マリンバならでは」の世界を楽しんでいただけると思います。

 

塚越さんがマリンバを始められたきっかけは何ですか

母の影響から、物心ついた頃にはピアノを習っておりましたが、私が12才のときに偶然マリンバの演奏を聴く機会があり、あたたかく、深く、心地よい音色に「この楽器がやりたい!」と強く思い、マリンバを始めました。高校は、4才上の姉と同じ、国立音楽大学附属音楽高校に行きたいと決めておりましたので、それまで目指していたピアノ科でなく、マリンバを学べる打楽器科を目指し、中学生の頃はマリンバ漬けの毎日でした。

 

プロになろうと思ったきっかけは何でしょうか?

大学卒業後は就職しようと思っており、大学3年生になった頃から就職について考え出していたのですが、就活で忙しくなる前に、世界中のマリンバ奏者の演奏を聴いてみたいな、という気持ちから、「最初で最後、国際コンクールを受けてみよう!」と思い、『第2回ベルギー国際マリンバコンクール』を受けました。光栄なことに、第2位をいただき、3年後に行われる同コンクールに、ゲストアーティストとして招かれることが決まったのです。それならばと、就職するのは少し先延ばしにして、3年後のゲスト出演のために勉強を続けたのですが、やるなら全力投球、3年後にはもっとレベルアップしていたいと、他の国際コンクールも受けたり、海外のマスタークラスにも頻繁に行き、毎日必死に勉強しました。その結果、コンクールで良い評価をいただき、アメリカ留学でさまざまな音楽と触れ合い、その素晴らしさ奥深さに惚れて、現在に至ります。

 

クラシックのほか、ジャンルを越えた多くの一流アーティストと共演されています。その中で、特に印象深い・感銘を受けたアーティストがいらっしゃれば教えてください。

たくさんの素晴らしいアーティストと共演させていただくたびに、多くの刺激を受けます。あるテレビ番組の企画で、ジャズピアノの松永貴史さん、津軽三味線の上妻宏光さんと私という異色トリオで演奏したことは、とても印象に残っています。松永さんも上妻さんも、音楽を自由自在に操る魔術師のようで、1回のリハーサルで、今までにない、この編成でしか表現できない新しい音楽が生まれ、心から音楽を楽しめました。
ピアノと三味線とマリンバ、同じ「打つ」ことで音を奏でる楽器でありながらも、それぞれ異なった得意不得意なところがあります。その不完全さが、欠点でなく長所であるかのように演奏していけたらいいなと感じられた共演で、この共演を経て、よりマリンバが好きになりました。

 

これまで演奏した曲の中で、特にお気に入りの曲はありますか?

私のCD「Passion」に収録されている、挾間美帆さん作曲の『アメリカ組曲ヘ短調』です。6つの作品からなる組曲で、ソプラノサックス、ウッドベース、マリンバのトリオ編成です。大変に超絶技巧作品なのですが、聴いている側にそれを感じさせず、それぞれの楽器の魅力が最大限に生かされ、また、6つの作品すべてに個性があり、素晴らしい作品だと思っています。

 

お休みの日はどのように過ごされていますか?

練習に明け暮れることが多いのですが、息抜きをしたいときは、お料理やお菓子作りをするのが大好きです。デコレーションしたり、盛り付けを工夫するのが特に楽しくて、街でかわいいお菓子を見つけるとすぐ真似したくなって、創作しています(笑)

 

今では中高の吹奏楽部で始めたという人や、自身でマリンバを習っている人も少なからずいらっしゃいます。打楽器やマリンバを学ぶ若い方へメッセージをお願いします。

打楽器は、打てば音が鳴る、誰でも簡単に音が出せる楽器です。それが大きな魅力のひとつだと思いますが、打楽器を学ぶ上では、そこから「魅力的な音」を探さなくてはなりません。ただ叩いているのではうるさい音になってしまい、音楽ではなくなってしまいますし、楽器も傷んでしまいます。でも、無駄な力を抜き、自分の耳を使って美しい音、良く響く音を奏でるよう心がけてもらえたら、奥が深く、おもしろく、毎日新しい発見のある楽しい楽器だと思います。「打楽器」と言っても、その楽器の数は無限にあります。ぜひいろいろな楽器に触れ、その音の多様さを楽しんでもらえたらうれしいです!

 

改めて、塚越さんにとって「音楽」とは何でしょうか。

ひとことで言い表すのはとても難しいのですが、いつか自分の表現方法として、自然になったらいいなと思います。音楽のすばらしさに触れ、そして音楽を通じて人とつながり、その世界を共有できることは、私にとって大きな喜びです。

 

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