Fhilia Hall
アーティスト インタビュー

エフゲニー・ザラフィアンツ(ピアノ)

2016年11月20日 14:00コンサートの詳細

 

メッセージは、音楽で伝えたい。

新シリーズ《私の人生、私の音楽》。一流音楽家が自らの言葉で「音楽」と「人生」について語るトーク&コンサート第2回は、ロシア出身の偉大なピアニスト、エフゲニー・ザラフィアンツが登場。ソ連時代からの波乱万丈な人生の中で培われた、優れた美学に裏打ちされた端正かつ確固たる表現力をもつ演奏には、コアなピアノ・ファンを満足させることはもちろん、ピアノを学ぶ人々にも必ず得るものがあるはずです。そんな期待のコンサートを前に、今回第2部マスタークラスのナビゲーターも務めるピアニスト・原口摩純さんがザラフィアンツ氏にインタビュー形式でお話を伺いました。

 

 

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原口:音楽を始められたきっかけですが、お父様がピアニストでいらっしゃったのですか?
ザラフィアンツ:はい、そうですね。
原口:ピアノの先生ではなく、公開の場で演奏会をされるピアニストですか?
ザラフィアンツ:そうですね。父は若い時にオーケストラでオーボエを演奏していて、ピアノはメインではありませんでした。オーケストラの仕事を終えた後は現在の仕事、オペラの伴奏をしていました。
原口:お母様は?
ザラフィアンツ:歌手です。
原口:(現在のロシアや近隣国が)ソビエトと呼ばれていた時代にお生まれになりましたが、どこで勉強されたかを教えてください。
ザラフィアンツ:1980年からモスクワ音楽院(付属中央音楽学校)で勉強しました。

 

 

原口:少しモスクワ音楽院のシステムについて伺いたいのですが、モスクワ音楽院では才能ある芸術家を寮生活で育てていたとか。ご家族とモスクワに住んでいても、寮に入らないといけないのですか?
ザラフィアンツ:そうです。8才から家族と離れて、寮で他の子どもたちと一緒に暮らしていました。
原口:入るためにはやはり試験があったのですよね。
ザラフィアンツ:もちろん。
原口:何歳の時に試験を受けられたのですか?
ザラフィアンツ:8歳の時です。普通の学校と違いプログラムが全然違いました。ピアノの課題が多く毎日何時間も練習しなければならない。

 

 

原口:今は、先生は何時間練習されていますか?
ザラフィアンツ:今は・・出来る限り(笑)
原口:子どものころは大体平均的に何時間くらい練習されていましたか?5時間とか、8時間とか。
ザラフィアンツ:時期によって違うけれど、時々10時間以上は練習しましたね。本当に黙々と練習。・・・ロシア人はあまり練習しないけどね。
原口:夏休みなどの長いお休みの間は何をして過ごしていらっしゃいましたか?虫を捕ったりとか・・・?(笑)
ザラフィアンツ:もちろん。家に帰るとどこか川や湖で泳いだりとか・・・まあ、みんなと同じですね。練習も少し休んで。先生に必ず休むように、強く言われますから。ピアノが下手にならない程度にね。授業が始まる一か月くらい前から、曲をちゃんと練習して暗譜しないといけない。前期も後期も、クリスマスもニューイヤーも同じように休みをもらいます。

 

 

原口:たくさん影響を受けた音楽家がいらっしゃると思うのですが、子どものころと大人になってからと今と、具体的にどんな方がいらっしゃいますか?子どものころは例えばすごく大ピアニストも・・・もう亡くなられた方もまだ生きていらっしゃった方もいると思いますが。
ザラフィアンツ:子どもの頃はクラシック音楽が難しくて、クラシックじゃない人を・・・。
原口:クラシックじゃない人?(笑)
ザラフィアンツ:ビートルズとか、そういう時期でしょう?1969とかちょうどその時期でしょ?ディープ・パープルとか(笑)。その当時は全部新鮮なものだったから・・・。本当に生き生きとして芸術的だったから、特に子どもの頃はみんな感激していました。段々青年や大人になってくると、最初は現代の音楽・・・ストラヴィンスキーとかシェーンベルクとか、ブーレーズ、クセナキスとか20世紀の作曲家ですね。15、16歳くらいから現代の音楽、クラシックの音楽・・・あとメシアンとか。
原口:メシアンは生きていらっしゃいましたね。
ザラフィアンツ:シュトックハウゼンとかね。その頃いっぱい出てきました。
原口:あまりピアニストには関心がなかった?
ザラフィアンツ:ピアニストは、その当時あまり面白くないと思っていましたから・・・。その後はバロックの音楽、16・17世紀とかね。20歳頃からはだいぶクラシック音楽ばかりになって・・・。20代では、まずラフマニノフを勉強しました。現代の音楽も沢山弾きました。ストラヴィンスキーやバルトーク、ショスタコーヴィチやプロコフィエフなどが気に入っていました。あとは大人になってやっとロマンチックな世界、ラフマニノフ、スクリャービンとかに行って。そして何年もかかって、一番遅くにショパン。

 

 

原口:今回はショパンとベートーヴェンを選ばれましたね。割と最近、よく演奏されるのですか?
ザラフィアンツ:一つの目標をまとめたいのです。32曲全曲は生きている間にいかないかもしれないけれど(笑)。それでも半分の16曲は演奏したい。その中で子供の頃に弾いたけれど、大人になってから充分自分自身で納得して演奏したいもの。今の大人の考えとか、自分で円熟したと思って、『今』お客さんの前で演奏したい曲をお聴きいただきたいと思っています 。子どもの頃はまだベートーヴェンの世界とか合わないから…。でも大人になると、ラフマニノフのロマンチックで立派な曲とか、ベートーヴェンの意味深い最後のソナタとか、まだ子どもの頃には手が届かない曲が弾ける。自分で素晴らしい演奏が出来るか出来ないかは別問題として、自分でCDや他の有名な演奏家の演奏を聴いてあまり満足していないので、伝えたいメッセージを込めて弾きたいと思います。
原口:今回はショパンのスケルツォも全曲弾かれますね。
ザラフィアンツ:これまでショパンは殆ど全部弾きました、バラードも最初から全曲、20年前日本で録音して・・・あとは、スケルツォを4曲演奏しないと。

 

 

原口:とても日本語がお上手ですけれども、中国語も堪能でいらっしゃると伺いましたが、日本語の先生について勉強されたのか、ご自分で勉強されたのですか?
ザラフィアンツ:独学です。音楽が中心の日々だから、全然時間がなかった。学校で勉強する時間はありませんでした。
原口:本などで勉強されたのですか?
ザラフィアンツ:漢字など勉強して・・・読めるけど、もちろんスラスラ読むことは出来ない。本当に勉強したかったけど時間が無かった。自分では満足していません。
原口:日本の本で、この作家のこの本が好きという方はいらっしゃいますか?
ザラフィアンツ:夏目漱石の「夢十夜」とか「こゝろ」とか素晴らしいですね。でも時間が無いから、よく知っている小説とかきちんと読む時間が無くて。味見だけです。
原口:他の言語はいかがですか?ロシア語はもちろん、ドイツ語ですとか。
ザラフィアンツ:僕は本が好きだから、もちろん喋れないけど色々な言葉で本をよく読み、大体話が分かります。昔の言葉はちょっと分かりにくいけど、目で読むとよく分かる。ヨーロッパの言葉とか・・・イタリア語、スペイン語、フランス、ドイツにも行くね。
原口:フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、ロシア語、日本語、中国語・・・!
ザラフィアンツ:最近イタリア語で沢山本を読みました。少しアラビア語でも読んでいます。勉強は沢山しました。タイにも遊びに行っているからタイ語も少し出来るし、韓国語も中国語も勉強したけど、復習しないと勿論忘れてしまいます。

 

 

原口:今回はリサイタルと別に、マスタークラスということで日本の子ども・若者を教えて頂いています。
ザラフィアンツ:子どもは大人と同じです。子どもは全部分かっていると思う。出来ないことは頼まない。出来る限り頑張ってほしいです。難しいものは、きりが無いでしょう?人によっては大人でも子どもっぽい人がいるわけだから。子どもと同じくらい。

 

 

原口:フィリアホールのお客様に対するメッセージをお願い致します。
ザラフィアンツ:言葉では言いにくいかな・・・。言葉と音楽はやはり違います。
原口:メッセージは音楽で伝えたい、と?
ザラフィアンツ:そう。メッセージは音楽の中で。
原口:ザラフィアンツ先生の音楽はとてもメッセージ性の強い音楽だと思いますし、そのように評価されていますが・・・話すよりも音で伝えたい、と?
ザラフィアンツ:そうです。言葉で伝えるとウソになってしまう。
原口:言葉で伝えきれないものがたくさんあると。
ザラフィアンツ:そうですね、舞台ではいつも少しずつ違うでしょう?決まったメッセージということはありません。その時々で暑い日もあったり寒い日もあったりするように、うまくいく、いかないという時もあるでしょう。
原口:生きているザラフィアンツのその時の音楽を聴いてほしい、というのがメッセージ?
ザラフィアンツ:その時の音楽とかドラマとか。音楽は生き物のようなものだから、決まったものではない、と考えたいですね。一つの言葉で言い表せません。捉え方が硬い人や狭い人にとっては、僕の解釈は珍しくて変わっている、など感じることがあるかも知れない。そこをオープンにして新しい体験をして頂きたい。新しいアングルとか、そうしたものを求める人にぴったりかも知れません。
原口:既成の音楽ではなく、新しい発見がいっぱいある音楽にしたいと。
ザラフィアンツ:聴き手が新鮮さを感じるような音楽にしたいからね。全部決まっていると、死んだ感じになってしまうでしょう?それは芸術ではない。何も決めてしまうことはない。芸術家も作曲家も時間があったら前に作った曲を次々チェンジしたかったと思いますよ。

 

 

原口:CDを22枚出されていますが、次に出されているとしたらどんなCDを?
ザラフィアンツ:ショパンのスケルツォ全曲です。ベートーヴェンのソナタも出したいですね。

 

 

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