Fhilia Hall
アーティスト インタビュー

トリオ・ヴァンダラー

2016年6月 6日 19:00コンサートの詳細

 

幻想に満ちたフランス室内楽の極み。

「フィリア・ハイムコンツェルト」シリーズ2016「日本×フランス 室内楽の現在(いま)」。第2回は、活動の充実期を迎えてこれまで以上に脚光を浴びる常設室内楽団「トリオ・ヴァンダラー」の初登場。日本ツアーではなんと殆どの公演で毎回違ったプログラムを演奏します(!)が、フィリアホール公演は、お国ものでもある近代フランス作曲家の傑作を取り揃えたプログラム。注目の公演を前に、ピアノのヴァンサン・コック氏にメールでインタビューをお願いしました。

 

 

トリオ結成のきっかけを教えてください。

 

3人のメンバーがパリ国立高等音楽院の学生だった1987年、私たちは南フランスでの室内楽のマスタークラスに招かれ、そこでピアニストのオリヴィエ・ギャルドンと チェリストのロラン・ピドゥからピアノ・トリオを学びました。それが我々の結成のきっかけです。その時に教材だったのはドミートリー・ショスタコーヴィチ のピアノ三重奏曲第2番ホ短調Op. 67でした。

 

1987年から91年にかけて、フランスの巨匠アーティスト達やボザール・トリオ、アマデウス四重奏団など名室内楽団に学ばれています。特に印象に残ったアーティストや、学ばれたときのエピソードを簡単に教えてください。

 

我々は多くの諸先輩から学びました。パリでの初期に学んだのはフランス音楽のエキスパートであるピアニストのジャン=クロード・ペヌティエ(Jean-Claude Pennetier) とジャン・ユボー(Jean Hubeau)でした。その時期、往年の名ヴァイオリニストで当時指揮者に転じていたユーディ・メニューイン(Yehudi Menuhin)とベートーヴェンのトリプルコンチェルトを共演したことも忘れられません。彼は希代のカリスマ性を持つ神話的なアーティストでした。そして、私たちが室内楽団として最も重要な影響を受けたのは、ボザールトリオ(Beaux-Arts trio)のメナヘム・プレスラー(Menahem Pressler)と、ケルンとロンドンで師事したアマデウス弦楽四重奏団でした。特にアマデウスの第一ヴァイオリンだったノーバート・ブレイニン(Norbert Brainin)は、音楽的なひらめきに満ちた芸術家で、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームスなどの音楽におけるウィーンの香りについて彼が語ってくれたことは今でも忘れられません。

 

今回のフィリアホール公演はオール・フランス・プログラムです(ピエルネ、フォーレ、ラヴェル)。プログラムの聴きどころを教えてください。

 

これらの音楽にはフランス芸術における情感表現が様々な形で映し出されています。ラヴェルのトリオは20世紀の最高傑作のひとつです。第一次世界大戦中に書かれ、パッサカリアとフィナーレは非常にドラマチックです。第1楽章はバスク地方の舞曲であるソルツィーコ(Zortzico)のスタイルで書かれ最初の動機はピュアな詩です。そして、パントゥム (Pantoum)と題された第2楽章は、スペイン風のリズムとマレー語の韻律に触発された素晴らしい名人芸の作品です。一方フォーレのトリオはこの作曲家の最後の作品の一つでラヴェルとは非常に異なっています。短いけれど完璧で夢のような第1楽章に続く第2楽章アンダンティーノは信じられないほど官能的で表現力の強さが際立ちます。第3楽章は奇妙なリズムとハーモニーで満たされていますが、そこにはフォーレの人間味あふれた人生観が垣間見られます。ピエルネがあまり知られていない作曲家であることは極めて残念と言わざるをえません。彼はセザール・フランクとドビュッシーから影響を受けた偉大な作曲家です。彼のトリオは交響曲にも匹敵する壮大なものです。第1楽章は豊かで不思議なハーモニーを持ち、荒々しい緊張感と穏やかで夢見るような気分が交互に現れます。第2楽章は、ラヴェルのトリオと同様にソルツィーコ(Zortzico)スタイルですが、軽く非常にリズミカルなスケルツォという全く別の方法で使われています。最終楽章は作曲家の類い稀なイマジネーションを示したもので、頻繁な気分の変化や不思議な肌触りに満ち、最後はハ長調の澄み切った勝利のコラールで幕を閉じます。

 

今回は東京近郊の他公演だけでも、すべて違うプログラムに挑まれます。大変ではないでしょうか?

 

今回の来日で演奏する曲はどれも少なく見積もっても30回以上は演奏しています。だからどの曲もすべて深く理解し演奏にも慣れています。私たちは同じプログラムを複数の場所で連続して演奏するよりも次々と演目を替えることを好みます。傑作たちを次々と演奏することは、我々の大いなる喜びです。

 

常設のトリオならではの醍醐味、トリオとして演奏する面白さを簡単に教えてください。

 

ピアノ・トリオの演奏で難しい点は、3つの異なる楽器が一緒に演奏する際にグループとしての完璧なバランスを追求することと、そして均質性を保つことであると思います。バランスと均質性はどちらも同じくらい重要です。3人の独立した音楽家がこの錬金術を習得することは時に容易ではありません。我々は長年ともに演奏してきた仲間として、個々人ののエゴを棚上げし、一方でお互いの個性は尊重しつつ、常にバランスと均質性に心がけてきました。

 

これまで日本にはたびたび「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」等で来日されています。日本の聴衆の印象を教えてください。

 

日本の聴衆はヨーロッパと大きくは違わないと思います。しいて言えば日本の人々は、おもてに感情を表わさない場合があることでしょうか。しかし内的には非常に感情豊かですよね。私たちはそれをよく感じています。

 

今後予定されている企画・プロジェクトなどがあれば教えてください。

 

新しい録音としてはドヴォルザークのピアノ三重奏曲作品90(ドゥムキー)と作品65を予定しています。あとはもちろんコンサート、そして新しい作品の発掘も続けていきます。我々は次世代の育成はたいへんに重要だと考えており、新しい才能のある学生を教える時間を確保することは音楽家の使命だと思っています。今回の来日でもいくつかのマスタークラスを行う予定になっています。

 

 

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