Fhilia Hall
アーティスト インタビュー

小山実稚恵 ピアノ
萩谷由喜子 音楽評論家

2014年1月25日 17:00コンサートの詳細

 

アリアと巡る旅。高峰“バッハ”を見すえて。

2008年からスタートした小山実稚恵の「作曲家の想い」シリーズ(全6回)。ラフマニノフ、シューマン、ショパンに続く、今回はバッハ。1/25本公演と12/3プレトークの打ち合わせも兼ねて、音楽評論家の萩谷由喜子氏とご自宅にてお話を伺いました。

 

 

早いもので、「作曲家の想い」シリーズももう4回目を迎えます。

 

小山:今までのラフマニノフ、シューマン、ショパンは、ピアノのための作品に向き合ってきましたが、今回のバッハはピアノという楽器を超えたもっと大きな音楽を前にして、襟を正してすっと対峙するような気持ちです。

 

プログラムはシャコンヌとゴルトベルク変奏曲です。

 

小山:シャコンヌは無伴奏ヴァイオリンのための作品をピアニストのブゾーニが編曲したピアノ版ですが、この曲も中身は変奏曲ですから、前半と後半で変奏曲同士を並べた、聴きごたえあるプログラムです。ありそうでなかなか組まれない興味深い取り合わせですね。テーマ(アリア)が数々の変奏を経て、また最後に戻ってくるという構成は2曲とも共通しています。シンプルでポリフォニック(多声的)なゴルトベルク変奏曲に比べて、シャコンヌは多彩な和音を駆使した豪華絢爛な響きをもった作品ですが、それぞれが最後にたどりつく心情は全く違うものです。対照的であると感じます。シャコンヌのテーマ、そしてゴルドベルクのアリアが最後に再びどのように戻ってくるのか、それをぜひ聴いて皆さまに感じとっていただけたら嬉しいです。
萩谷:ゴルトベルク変奏曲は、不眠症に悩むカイザーリンク伯爵がお抱えのクラヴィア奏者ゴルトベルクに夜な夜な曲を弾かせるためにバッハに作曲を依頼したという説がありますが、作曲当時のゴルトベルクの年齢がまだ14才だったことなどからもそれは疑わしく、自筆譜も残っていないために作曲の経緯は今でも明らかではないのです。ともあれ、曲は驚くほど精緻で完璧、高度な作曲技法で書かれていて、まさに天才バッハしか書き得なかった傑作です。孤高のピアニスト、グレン・グールドがデビュー時と最晩年に素晴らしい2つの録音を残したことで、いつまでもグールドの記憶とは切っても切れない曲でもあります。12月のプレトークでは話題が盛りだくさんですから、楽しみにしていてください。

 

小山さんは今年4月、最新アルバム「シャコンヌ」をリリースされました。

 

小山:東日本大震災後、どのようにピアノに向かうべきか葛藤する中で、直後のアルバム「ヴォカリーズ」では心に沁みるような曲を集めましたが、ここに来てようやく気持ちがだんだんと高まってきて、聴き手を力強く鼓舞するようなシャコンヌを取り上げようと思ったのです。

 

小山さんのバッハといえば、2000年の没後250年の記念イヤーに、フィリアホールで連続演奏会を開催していただきました。

 

小山:バッハに真正面から取り組んだのは実はそのときが初めてでした。バッハの音楽の存在感は圧倒的です。ただただ大きい。あれから10年以上経ち、ゴルトベルク変奏曲も演奏を重ねてきましたが、テンポ、アーティキュレーション、アクセント、タッチ、リピートなど、演奏のアイディアは尽きることはありません。どのようにアプローチしようかと毎回ワクワクします。

 

デビュー25年を過ぎ、音楽への向き合い方に変化はありますか?

 

小山:不思議なもので、歳月を重ねるほど、これも伝えたい、あれも伝えたいと、音楽への想いは深まる一方です。自らの気持ちに正直でありたいと思っています。

 

萩谷さんは女性音楽家をテーマに数々の著書もご執筆され、最近は日本のクラシック音楽黎明期に活躍した天才ヴァイオリニスト諏訪根自子の劇的な生涯を描いた評伝が大きな注目を浴びました。

 

萩谷:僭越ながら私も小山さんに同感で、世の中にもっと知られるべき事実に出会うと、私が皆さまに伝えなければいけないという使命感に突き動かされて、夢中でそれを追いかけ続けてきました。様々な場面で小山さんとご一緒させていただくことが多いですが、小山さんのそうした変わらぬ姿勢には、いつも共感とともに深い尊敬の念を抱いています。

 

最後に小山さんへ、若い人へのメッセージをいただけますか?

 

小山:時代の変化があるのかもしれませんが、安易な道を選んで手頃な満足感を得ようとせず、いつも高い山を目指す心を持ってほしいですね。

 

 

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