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秋山和慶(指揮)ロング・インタビューその2

Kazuyoshi Akiyama, conductor

出演日:2018年7月14日(土)14:00

Saturday 14 July 2018 , 14:00

オーケストラの基本をもう一度見直して、その上で愉しく心地よく。

マエストロ・秋山和慶氏率いる「ハーヴェスト室内管弦楽団」の旗揚げ公演を控えてマエストロへの充実のロング・インタビュー。第2回は少しお話が変わり、マエストロが愛する「鉄道」のお話。鉄道とクラシック音楽の素敵な出逢いのお話をお伺いすることができました。そして、お客様へのメッセージです。

ここでお話が変わりますが、マエストロはオフの日には何をされているでしょうか?たとえば、健康維持のために何かしていらっしゃることなど。知らない一面をファンの方が知ったら嬉しいと思います(笑)。

秋山:健康維持のためにしていることは、正直特にないんですが…無茶飲みは絶対にしません(笑)そして暇なときは、小さい時から鉄っちゃん趣味ですから(笑)。

 

マエストロの鉄ちゃんは有名なお話ですが、鉄道を乗るためだけに出かけられることもあるのですか?

秋山:ええ。一番行った回数が多いのは広島でしょうか。寝台も乗りますし、終わった後に一日でも二日でも空きがある時は、広電(広島電鉄)に乗るんです。広電では工場を見せてもらったりもしました。それから、この前廃線になっちゃったんだけど、島根県から広島県に抜ける三江線とかも。利用者が少なすぎて廃線になっちゃったんですが、去年の秋頃かな、みんなで乗りに行こうって行きました。ついでに、そのあたりのローカル電車をみんな乗り歩いたりしてね。
暇な時はそういうことをしています。もちろん勉強しなきゃならない時は勉強するけどね。さぞ楽譜を見て…CDを聴きながら、ちょっとチビリとブランデーでも飲んだりなんて…そんなイメージとは僕違うかな(笑)

 

似合いそうですが…(笑)。

秋山:心の癒しをなさっているんですか?って言われて「いえ、してません、電車に乗ってます」って(笑)。

 

幼少時からなんですよね、鉄道がお好きなのは。海外の鉄道も乗られますか?

秋山:時間があれば乗りたいんだけどね。カナダにナショナル・ユース・オーケストラという、国が補助してくれているオーケストラがあるんです。PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)みたいに夏に2か月間開催していて、カナダだけでプロオケの奏者になりたい若い人たちの為の養成所のような感じで人が集まります。何十年も前に私も何年か参加したんですが、そのときに、最後の仕上げにカナダをひと回りしたり、ヨーロッパに行ったりしました。日本には2回来たんです。香港やシンガポールに行ったこともあった。カナダには東西の大陸横断鉄道があって、乗りつめでいくと4日間くらいかかるんですが、途中の都市で降りては演奏会やって、また乗って…寝台車で行くんです。ロッキー山脈のすごい景色のいい所を通ったりするの。

 

それはまさに心の健康ですね。

秋山:日本で面白かった経験だと、岐阜県に樽見鉄道っていう、今第三セクターになった路線があるんです。大垣(市)から山の中に入っていくんですが、終点に「薄墨桜」っていう樹齢1500年のものすごい大きな桜の木があるんです。1500年前には継体天皇が島流しにあって、その途中でその桜の木を植えたっていう伝説があり…それが、本当に綺麗なんです。薄墨っていうから灰色に近いんですね。白と灰色で、ちょっとだけピンクがかっている。「あーッ」と声がこぼれるほど大きい木なんだけど、そこが綺麗な公園になってるんですね。
で、その樽見鉄道で何かイベントをやろう、と相談を受けたんです。その時私は、音楽列車を走らせて、終点に野外ステージ作って、夜は桜の木に照明当てて、演奏会やりませんか?って提案したことがありました。それはいい!って乗ってくれてね。ただし私からは条件を1つ出しました、蒸気機関車走らせてよってね(笑)。
客車をつなげて、お客さんもオーケストラも乗せて、そこから段々話が膨らんじゃって…オーケストラは各駅では演奏しないんだけれども、要所要所の駅に停車して、中学生のブラスバンドとか、地元のママさんたちのコーラスとかがその場で演奏して、またそれを乗せていくんです。それでオーケストラの演奏会は夜にやるんですが、それまでお客さんを乗せて、何往復かして走らせる。蒸気機関車を使ったら100メーターおきに警備員を立てなきゃいけないことになって、えらいお金かかったらしいんだけど(笑)。そして、私は機関車に乗って1日機関士をやらせてもらい、制服着て帽子もかぶった(笑)。汽笛はちゃんと鳴らして下さいって言われて、出発の時やトンネルに入るときとか、色々規則があるわけで、鉄橋渡る時はどれぐらい鳴らす、とか全部教えてもらっておいて-ま、あらかじめ知っていたけれども(笑)-、ピストン輸送でお客さんを運びました。鉄道会社の方は4000人までは数えたって言ってたかな。ものすごい数で、これ以上はもう数えられませんでした。って言われてね。素晴らしいコンサートになって凄くお客さんも喜んでくれました。

 

夢のあるお話ですね!

秋山:広島でも広電がスポンサーで、鉄道コンサートというのをやらしてもらいました。
ポスターでは広電の制服を着て帽子かぶったら、こんな笑顔、見たことないって楽員さんが言うわけよ(笑)。

 

そういう日常の風景に、音楽が自然に入っていくということはすごく大切なことですよね。ちなみに、国内の路線でまだ乗ったことのない路線というのはありますか?

秋山:まだいくつか残ってますね。中国地方はほとんど制覇しました。九州もほとんど乗った。でもたとえば筑豊鉄道とか、北九州の炭鉱地帯に昔網の目のように走っていた鉄道の多くが廃線になったりしているけど残っているのもあって、ああいうのはまだ乗ったことがないんですよね。

 

話は戻りますが…最後に、今回の公演に関して、お客様に向けて意気込みを込めてメッセージをお願い致します。

秋山:お客様あってのことですので、やはり愉しく心地よく聴いて頂けたら嬉しいです。でも、奏者である我々は心地よく弾いただけではだめなんですよね。やはり本当に気持ちを込めてというか、ただがむしゃらに弾くのではなくて、静かなところは心に沁みるような音を、力いっぱい音を出さなきゃという時はパワフルな音をちゃんと外に出す、というような。
オーケストラの基本なんですが、それをもう一度見直してみたいと。そしてその上で、弾くほうも楽しくやりたいと思っています。奏者が音楽が苦しいというのでは、聴いている方も段々眉間にしわが寄ってきちゃいますからね。

 

フィリアホールは従来室内楽やソロ公演が多く、なかなかオーケストラを聴きに行かれる方が足を運んで下さらないことが多かったのですが、今回の公演は反響が大きく、やはりオーケストラを普段聴かれない方が注目をされているようで、こちらも楽しみにしています。おそらく、このホールに初めてという方もいらっしゃるのではないかと。

秋山:それは嬉しいですね!ありがとうございます。


(協力:ハーヴェスト室内管弦楽団)

 

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