©Dario Griffin
Marcin Dylla,Guitar
Saturday 07 September 2024 , 14:00
「この地上で最も才能あるギタリストの一人」~ワシントン・ポスト紙
音楽評論家、愛好家、ファンたちが激賞し間違いなく世界のトッププレイヤーであると認めるポーランドが生んだ驚異のギタリスト、マルシン・ディラ。
2020・2021年と、コロナ禍の影響で延期・中止を余儀なくされた彼のリサイタルが、ついに2024年9月7日(土)フィリアホールで待望の実現を果たします。
音楽に対するひた向きな姿勢や具体的な練習方法から、生まれ変わってもギタリストでありたいか!?
今回の来日直前に敢行された、天才ディラの人間的な一面を垣間見ることができるインタビューをご覧ください!
ギターを始めたきっかけを教えてください
7歳のとき両親にすすめられて始めました。二人は私のことをとても音楽的な子だと思っていたようです。いつも歌っていましたからね。楽器を弾くのは子どもにとってとてもいいことだと思います。もちろん、自分が小さかったときは将来のことなんか考えなかったけれど、10代になって「それほど自分は悪くはないのでは」と気づき、やがてプロへの道が開けていきました。
他の楽器を習おうとは思わなかったのでしょうか?
学校で必修科目としてピアノを弾いたことはあるけれど、ギターほどには楽しめなかったですね。
ギターを弾いていないときの楽しみは何ですか?
子どもたちと一緒に過ごすことですね。
日本は何回目ですか。前回も9月でしたが、日本の暑い夏は好きですか?
日本はいつだって大好きです。この来日で5回目になります。毎回とても愉しんでいますよ。
日本の聴衆についてどうお感じですか?
音楽を聴くにあたって「静かである」というのはもっとも重要で、根源的なことです。日本の聴衆はとても素晴らしいと私は感じているし、コンサートはいつもとてもプロフェッショナルに運営されています。
コンサートの前は緊張しますか?
緊張はしませんが、よく集中するように心がけています。でも常に最高の集中力を発揮する方法を正直言って知らないんです、むしろそれが私をナーバスな気持ちにさせますね(笑)。
あなたの演奏は完璧な芸術作品のようで、とても魅力的です。人々を演奏に引き込む秘訣はありますか?
自分の演奏はロジカルでありたいと思っています。なので他の音楽家の演奏を聴きながらロジックについて考えるんです。ちょっと変わっているかもしれませんけれど。
今回の来日ではマスタークラスも開催されます。日本人ギタリストについてどのような印象をお持ちですか。
みんな素晴らしいし、いつも敬意の念を持っている人たちだと感じます。レベルはとても高いですね。
クラシック・ギターの世界には次々と新しい才能が誕生しています。今後ギター界は変わって行くでしょうか。そうだとすればどのような方向に変わって行くでしょうか。
だれもが人間味のある芸術を好むものだと思うし、興味深い音楽家になるためにはそもそも興味深い人間である必要があるでしょう。そのためには音楽教育だけにとどまらない、もっとずっとたくさん、ほかの要素が求められると思います。生きた経験、知識、成熟度、音に対する感受性といったものがとても重要なのではないかという気がします。
毎日スケールやアルペジオなどの基礎練習はしますか?また、暗譜や読譜は得意ですか?どうやっていますか?
しません。毎日同じことを同じようにやっていても成長はないからです。反対に自分が気に入っていて生徒にもすすめているのは、クリエイティブであリ続けること、練習方法もそのとき勉強している作品にあわせて変えて(発展させて)いくということです。難しい箇所というのは、それぞれが固有の難しさを持っているので、個別の分析が必要ですね。
暗譜するには、手先の記憶だけでなく、知的な記憶を使う必要があります。分析、比較、そして楽曲をよく理解する必要があります。手による記憶に重きを置きすぎるのはよくある間違いです。
新しい曲を勉強するときはどのように練習しますか?以前のインタビューでは、メトロノームを使った練習は勧めないと仰っていましたが、いまでも同じ考えでしょうか。
メトロノームは人間的ではなく、リズミックでもなく、音楽的でなく、息づかいもありません。感情を表現する助けになりません。メトロノームは音楽性を殺してしまうものだと信じています。
日本滞在中に楽しみにしていることはなんでしょうか?
日本食は大好きですね。すごく健康的で、しかも美味しい。今回もエンジョイしたいですね。美術館に行ったり、観光をしたりする時間がないのは残念です。
もし生まれ変わったらまたギタリストになりたいですか?
それも悪くないですね。ただ、音楽家という職業はとても魅力的なので、どの楽器を演奏するかということはそれほど重要ではないと思います。
このプログラムの聞き所について
前半はかなり保守的なプログラムになっています。3つの時代から3つの曲を。とても古典的なスタイルの作品ですね。後半は伝説や言い伝えなどからインスピレーションを受けたスペインと南米の音楽をお届けします。
日本の聴衆へのメッセージ(使用楽器について)
今回のツアーではイタリア人の楽器製作家、ガブリエレ・ロディの新しい楽器で演奏します。(桜井さんのギターも持っていてよく使っています。)この楽器はトーレス(※)のスタイルで作られています。この日本ツアーは私にとって今シーズンのハイライトです。皆さんと一緒にリサイタルを楽しみたいと思っています。
※アントニオ・デ・トーレス(1817-1892):スペイン出身の偉大な楽器製作家。「ギターのストラディバリウス」と言われる非常に優れた楽器を残した。
(聞き手&訳:山根悟郎)
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2024.9.7(土)14:00開演「マルシン・ディラ ギター・リサイタル」