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©Harald Hoffmann

サラ・トラウベル(ソプラノ)

Sara Traubel,Soprano

出演日:2024年12月7日(土)14:00

Saturday 07 December 2024 , 14:00

歌は私自身です。私の子どもたちの幸せ、そして聴衆の皆様と音楽を共有できること、これこそが私の人生でなにより大切にしたいことです。

名門ソニー・クラシカルからCDをリリースし絶賛を博す、「ディアナ・ダムラウの後継者候補」とも称されるドイツ出身のソプラノ歌手が、この12月に初来日を果たします。
巨匠ヘルムート・ドイチュ、アンドレアス・ショルらとたびたび共演し、メッツマッハー、A.フィッシャー、ガッティなどの著名指揮者たちと共演。ベルリン・フィルハーモニー、チューリヒ歌劇場、ライプツィヒ歌劇場、ブレーメン音楽祭等に出演するなど、欧州の一流劇場で次々と活動する彼女は、実はメトロポリタン歌劇場で活躍した伝説の歌手ヘレン・トローベル、そしてあのドイツを代表する巨匠指揮者ギュンター・ヴァントの孫でもあります。
今欧州で最も注目される歌手の一人である彼女、記念すべき初来日にあたってのインタビューを公開します!

日本デビューリサイタルへの意気込みを聞かせてください。

日本で歌うことは長年の夢でした。日本ほどたくさんのクラシック音楽愛好家がいて、深い関心を持つ国は世界中でもほとんどありません。そのような聴衆の皆様の前で歌えることは大変な名誉だと感じていますし、いまからとても楽しみにしています。

 

今回のオール・モーツァルト・プログラムについて教えてください。

バッハと同じでモーツァルトの書いた音符は一つ一つすべてが美しく、完璧です。なので、プログラムの聴きどころを語るのはとても難しいと感じています。とはいえ、私にとって特別な意味のある、ずっと心に留まっている歌曲やアリアはいくつもあります。たとえば《夕べの想い》に込められた感情には驚かされます。メランコリックな激しさがあって、まさに夕方のひとときを過ごしているような、そして過ぎ去った人生について思い返すような感覚が完璧に表現されていると感じます。オペラアリアではドンナ・アンナと伯爵夫人も私にとって大きな意味があります。狂騒的かつコミカルな《フィガロの結婚》の中心にはたった一度だけ、とてつもなく真剣で悲しい感情が表れる瞬間があります。伯爵夫人の「楽しい思い出はどこへ」です。この曲に心を動かされない人などきっといないでしょう。
クリスマスの歌曲は、この音楽とともに育った私にとって特別な意味があります。《マリアは茨の道を歩み》は私の一家の出身であるドイツの森のなかの伝統的な歌です。レーガーの《マリアの子守歌》は私がものごころついたときから聴かされていた曲で、自分の子どもたちにも歌って聴かせています。

 

モーツァルトとモーツァルトのオペラについてどのように考えていますか。あなたにとってモーツァルトの魅力とはなんでしょうか。

モーツァルトは、12歳の時にオペラ歌手になろうと私が決意をしたときから、ずっとともにあります。そして自分が舞台から去るその日まで、私の一部でありつづけて欲しいと心から願っています。歌手として、自分の声を良い状態で保つこと、そしてこの先どのようなレパートリーが待ち受けていようとも、モーツァルトを歌うテクニックを常に維持することが何より重要だと考えています。モーツァルトはいわば究極のベンチマークです。モーツァルトを歌うと、テクニックの欠点はどうやっても隠すことができません。またピアノやその他の楽器を含め、書いた音符全てに人間の声を意識していた作曲家はモーツァルト以外ほとんどいません。モーツァルトの音楽は、これまで書かれた音楽のなかで最も人間味にあふれています。

 

モーツァルトのオペラの中で、あなたにとって最も近い役はなんでしょうか。そして反対に最も遠い役はなんですか。

私のオペラのキャリアは夜の女王(《魔笛》)で始まりました。しかしいまでは過去のものです。私には確かな高音域とコロラトゥーラのテクニックがあったので歌うことができたのです。それと、あまり神経質すぎない自分の性格もよかったかもしれませんね!夜の女王のハイFを歌うには本当の意味での度胸が必要だからです。モーツァルトはこの役を義理の姉(注:妻コンスタンツェの姉ヨゼファ)のために書きましたが、私も彼女と同じマンハイムの出身なので、その意味でも楽しかったですね。ただ、究極的には夜の女王は歌手にとってそこまで興味をそそる役ではないかもしれません。というのも、この役には舞台上でキャラクターを作り上げ、個性を発展させる余地がないからです。それより私はドンナ・アンナ(《ドン・ジョヴァンニ》)にとても惹かれます。優しいけれど退屈な婚約者と、力ずくで自分をさらおうとする野性的で無法な恋人の間で揺れ動く彼女に・・・・・・。ひょっとすると彼女はそこまで嫌ではなかったかもしれません。どうでしょう?フィオルディリージは、婚約者への変わらぬ忠誠心と、冒険したいという欲望の狭間で苦悩する魅力的な人物ですね。

 

ご自身の声に最も適していると思う役、またいま最も歌いたい役は何ですか?

オペラでの私の役はフィオルディリージ、ドンナ・アンナ、伯爵夫人が多いのですが、リヒャルト・シュトラウスやワーグナーが書いた重要な女性の役も増えて来ました。意外に思う方も多いかもしれませんが、この3人が書いた女性の役には少なからず関連性があります。《ばらの騎士》ではソフィーではなく元帥夫人を歌うようになりました。そして近々《タンホイザー》のエリーザベトを歌うことになっています。出来ればゼンタ(《さまよえるオランダ人》)とエヴァ(《ニュルンベルクのマイスタージンガー》)も歌いたいですね。特にエヴァは私の声にぴったりだと思っていて、いつかオペラの舞台で歌えるといいなと思っています。モーツァルトの《イドメネオ》ではイリアを歌いましたが、エレットラも歌いたいと思います。R.シュトラウスでは元帥夫人のほかにクリュソテミス(《エレクトラ》)を歌いたいですね。

 

モーツァルトについて、ご自身の思い出を聞かせていただけますか?

モーツァルトは私の憶えた最初の音楽です。このプログラムにある何曲かは10代前半のころに初めて勉強しました。オペラにおける初めての大きな瞬間も、やはりモーツァルトでした。チューリッヒで、《後宮からの誘拐》のコンスタンツェ役でした。文字通り開演4分前に代役での出演を告げられ、飛び入りで舞台上に押し出されました。夜の女王で培われた度胸がとても役だった瞬間でした!

 

あなたにとって「歌う」とはどういうことでしょうか。

歌は私自身です。私の子どもたちの幸せ、そして聴衆の皆様と音楽を共有できること、これこそが私の人生でなにより大切にしたいことです。

 

初めての日本訪問で楽しみにしていることは何ですか?

日本の聴衆の皆様にお会いできること、ピアニストの浅野菜生子さんとともに聴衆の皆様と音楽をわかちあえることを何より楽しみにしています。そして私は料理に関心があります。音楽以外で唯一といっていいほど、職業となり得るほどの情熱を傾けています。なので、この地上で最高の料理を少しでも味わえることを、とてもとても心待ちにしています!

(聞き手&訳:山根悟郎)

コンサートの詳細はこちらをクリック↓
2024.12.7(土)14:00開演「サラ・トラウベル ソプラノ・リサイタル」

 

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