©Ayustet
Sunday 20 October 2024, 14:00
"Yokohama Music Story" Vol.2
「横浜グランドホテル」は明治6年(日本初の鉄道が新橋~横浜間に開通した1年後)に居留地20番(現在の「横浜人形の家付近」)に開業したホテルで、日本における西洋料理文化の普及に寄与したことでも知られています。現在山下町にある「ホテルニューグランド」(昭和2年開業)の名は、関東大震災で閉館した旧グランドホテルにちなみ横浜市民から公募されて付けられたとされており、このホテルの存在感が高かったことが伺われます。
一方で、帝政期ロシア(現ウクライナ東部ドネツィク州)で生まれた、20世紀を代表する作曲家プロコフィエフは、自身も優れたピアニストであり、海外興行の際アメリカの前に偶然にも日本に立ち寄り、東京(帝国劇場)、そして宿泊していた横浜グランドホテルでリサイタルを開催したことが、作曲家自身の手記で記録に残っています。公演パンフレットでは「世界的大作曲家大洋琴家 セルギー・プロコフィエフ氏 ピアノ大演奏會」と銘打たれ、入場料は 特等=参円 一等=弐円五拾銭 二等=弐円 三等=壱円 四等=五拾銭 と設定されたようです。
東京公演の日の記述を見ると「実務的に淡々と演奏した」「聴衆は少なかったがなんとか(券が)売れてよかった」といった記述の他、「客の大半が日本人で、とても礼儀正しく聴いていた」こと、「技巧的な曲を例外として拍手は少なかったものの、あまり不協和音には当惑していなかった…」といった記述がみられるのは大変興味深いところです。作曲家自身は「異質な音に慣れている日本人にとって、西洋人の協和音と不協和音の違いなどあまり感じないのだろう」と分析しており、当時の日本人がどのように西洋の同時代音楽を受容し、それをプロコフィエフがどう受け取ったのか、想像をかきたてられます。横浜公演の日の記述では、プログラムは東京公演の初日と同じ、一方入場料は特等が五円と高く、聴衆はさらに少なかった(150人との記載あり)が、とても興味をもって聞いてくれた…と記録されています。
このリサイタル時、プロコフィエフはピアノ・ソナタ第3番を作曲したばかりで、彼の自作のほとんどはまだ作曲されたばかりの「現代音楽」でした。一方このツアーでは、自作と合わせてショパンの作品を弾いているのも興味深いところ(東京ではシューマンの作品も演奏したようです)。作曲家自身の自作自演録音はいくつか残っていますが、今回は生演奏でこの横浜公演のプログラムを再現します。横浜を拠点に国内外で活躍する名ピアニスト・阪田知樹が再現する鮮明な演奏で、ぜひ当時の風景を想像してください。
横濱音楽物語(ヨコハマ・オンガク・モノガタリ)
第2回「横濱ピアノ物語」関連企画
レクチャー講座1「日本ピアノ事始め in 横浜」
レクチャー講座2「欧州、ロシア、日本~ピアニストの旅路」
講師◎浦久俊彦(文筆家・文化芸術プロデューサー)
会場◎フィリアホール・リハーサル室
※両講座は終了いたしました。
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「横浜」と「西洋」、音楽・文化・アートが交差する
コンサート&レクチャー・シリーズ
"横濱音楽物語(ヨコハマ・オンガク・モノガタリ)"
(全6回予定)
安政6年(1859)、東海道からも外れた寒村に港がつくられたとき、
世界に向けて大きな扉が開かれた…。
ここ「横浜」から、ありとあらゆる西洋文明が、まさに怒濤のように
日本にもたらされたのです。
街を行き交う異人たちのきらびやかなドレスや洒落た小物。
横浜浮世絵と呼ばれた色鮮やかな錦絵に描かれた情景や、
外国人居留地の劇場から聞こえてくるのは、えもいわれぬ甘美な旋律。
日本のクラシック音楽の歴史は、まさに、
ここ「横浜」からはじまったのです。
明治から百五十年。
いま、日本における西洋は何かを、音楽からみつめなおす
「横濱音楽物語」が、フィリアホールではじまります。
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第1回◎ 再現!黎明期のクラシック演奏会 in 横浜
第2回◎ 横濱ピアノ物語
第3回◎ ヨコハマ「うた」物語
第4回◎ 横浜現代作曲家探訪
第5回◎ 横浜オーケストラ物語
第6回◎ 横浜・青葉台・フィリアホール~田園都市と音楽文化
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※第3回以降は、2025年以降に開催予定です。各回の詳細は決定次第発表いたします。
S¥4,500 A¥4,000
郵送・FAX◎2024年6月10日(月)18:00必着
Web◎2024年6月8日(土)11:00~6月10日(月)18:00
※先行予約は電話申込はございません。
2024年7月7日(日)11:00~
※発売初日は電話・Webでのみ受付
■曲目・出演者・料金・発売日等やむを得ず変更させていただく場合があります。
■未就学児の入場はお断りいたします。
■青葉台東急スクエアの駐車券のサービスはございません。
■車椅子席をご希望の方は、チケット申込の際お知らせください。
■チケット定価に含まれない諸手数料等は、公演の中止・延期等における
チケット料金の払戻しの対象にはなりません。何卒ご了承ください。
フィリアホールチケットセンター
☎045-982-9999(営業時間11:00-18:00 第3水曜日休館)
フィリアホール(横浜市青葉区民文化センター)
浦久俊彦事務所(一般財団法人欧州日本藝術財団)
ピアノ◎阪田知樹
アフタートーク・ナビゲーター◎浦久俊彦
SAKATA Tomoki, Pianist
URAHISA Toshihiko, Navigator
大正7年(1918年)7月9日に横浜グランドホテルで開催された、プロコフィエフが演奏したピアノ・リサイタルのプログラムを再現!
※1
プロコフィエフ◎
ピアノ・ソナタ 第1番 ヘ短調 Op.1(1907/09)
「10の小品」より 前奏曲 Op.12-7(1906)
「4つの練習曲」より 第4番 Op.2-4(1909)
「10の小品」より ガヴォット Op.12-2(1906)
トッカータ ニ短調 Op.11(1912)
ショパン◎
バラード 第3番 変イ長調 Op.47
エチュード集より3曲(抜粋)※2
プロコフィエフ◎
ピアノ・ソナタ 第3番 イ短調 Op.28(1917)
4つの小品 Op.4(1908) ※3
2.批難(熱情) 1.物語(想い出) 3.絶望 4.悪魔的暗示
…終演後に阪田知樹&浦久俊彦によるアフタートークをステージで開催!
(チケットをお持ちの方はどなたも聴講可)
※1 本公演では演奏中に休憩が入る予定です。
(当時の記録では休憩の有無に関する記載なし)
※2 ピアニストにより任意に選ばれた曲を演奏します。
(当時の記録には具体的な楽曲記載なし)
※3 演奏記録に記載されていた楽章順にて演奏予定です。
2016年フランツ・リスト国際ピアノコンクール第1位、6つの特別賞。 2021年エリザベート王妃国際音楽コンクール第4位入賞。東京芸術大学を経て、ハノーファー音楽演劇大学大学院ソリスト課程に在籍。
第14回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにて弱冠19歳で最年少入賞。ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、聴衆賞等5つの特別賞、クリーヴランド国際ピアノコンクールにてモーツァルト演奏における特別賞、キッシンゲン国際ピアノオリンピックでは日本人初となる第1位及び聴衆賞。国内はもとより、世界各地20ヵ国以上で演奏を重ね、国際音楽祭への出演多数。
2015年CDデビュー、2020年3月、世界初録音を含む意欲的な編曲作品アルバムをリリース。阪田知樹ピアノ編曲集「ヴォカリーズ」を2022年5月に、「夢のあとに」を2023年7月に、阪田の作曲した「アルト・サクソフォーンとピアノのためのソナチネ」が23年11月に音楽之友社より出版。内外でのテレビ・ラジオ等メディア出演も多い。
2017年横浜文化賞文化・芸術奨励賞、2023年第32回出光音楽賞、第72回神奈川文化賞未来賞、第20回ベストデビュタント賞を受賞。
文筆家、文化芸術プロデューサー。パリを拠点に文化芸術プロデューサーとして活躍。帰国後、三井住友海上しらかわホールのエグゼクティブ・ディレクターを経て、現在、浦久俊彦事務所代表。一般財団法人欧州日本藝術財団代表理事、代官山未来音楽塾塾頭、三島市文化アドバイザーなど、その活動は多岐にわたる。2021年3月、サラマンカホール音楽監督として企画した『ぎふ未来音楽展2020』が、サントリー芸術財団第20回佐治敬三賞を受賞した。
著書に『138億年の音楽史』(講談社)、『フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか』『悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト』『ベートーヴェンと日本人』(以上、新潮社)、『オーケストラに未来はあるか(指揮者・山田和樹との共著)』(アルテスパブリッシング)など。最新刊は『リベラルアーツ?「遊び」を極めて賢者になる』(集英社インターナショナル)。